空き家の維持管理費用の負担や資産価値の低下に悩む所有者が増えています。民泊として活用することで、定期的な収入を得ながら建物の価値を維持できる可能性があります。この記事では、空き家を民泊として運営する際のメリットやデメリット、必要な費用、手続きなど、具体的な内容をわかりやすく解説します。
空き家を民泊にするメリットは何がある?

空き家の民泊活用は、所有者の経済的負担を軽減しながら地域の活性化にも寄与できる選択肢です。物件を放置することなく、積極的な資産活用を実現できます。
空き家から収入が得られる
民泊運営による宿泊料収入は、空き家の維持管理費用を補填する有効な手段となります。一般的な賃貸物件と比較して、短期滞在者向けの宿泊施設として運営することで、より柔軟な料金設定が可能です。観光地や都市部では、観光客やビジネス利用による安定した需要が見込めます。
固定資産税や火災保険料などの経常的な支出を、宿泊収入で賄うことができます。また、清掃やメンテナンスの費用も運営収入から捻出できるため、所有者の金銭的な負担を大きく軽減できます。
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初期投資を抑えて開業できる
すでに建物がある状態から始められる空き家活用は、新規に物件を取得する場合と比べて初期投資を抑えることができます。基本的な設備や家具を整えることで、宿泊施設としての機能を確保できます。
改修工事についても、必要最小限の補修から始めて、収益に応じて段階的に設備を充実させることが可能です。物件の特徴を活かした独自の宿泊体験を提供することで、大規模な投資をせずとも競争力のある施設運営ができます。
建物の資産価値を維持できる
定期的な利用により建物の劣化を防ぎ、資産価値の低下を抑制できます。人の出入りがある状態を保つことで、建物の不具合を早期に発見し、適切な修繕対応が可能になります。
空調や水回りなどの設備を定期的に使用することで、機能を維持できます。また、清掃や管理が行き届いた状態を保つことで、将来的な売却や用途変更の際にも有利な条件を確保できます。
地域活性化に貢献できる
民泊施設の運営は、地域の観光振興やインバウンド需要の受け皿として機能します。宿泊客の増加は、周辺の飲食店や商店への経済効果をもたらし、地域全体の活性化につながります。
特に地方部では、空き家を活用した特色ある宿泊施設の提供により、新たな観光資源として注目を集めることができます。地域の文化や魅力を発信する拠点として、交流人口の増加に貢献できます。
空き家を民泊にするデメリットとは?

民泊運営には収益機会がある一方で、法規制や日常的な管理運営における課題があります。これらのリスクや負担を十分に理解したうえで、運営開始を検討する必要があります。
年間営業日数に制限がある
住宅宿泊事業法による規制により、民泊の年間営業日数は180日以内に制限されています。この制限により、稼働率を最大化できない期間が生じ、収益機会が制約されます。観光需要が高まるハイシーズンでも、年間の営業日数制限に達すると営業を停止しなければなりません。
また、地域によっては条例により営業できる期間や曜日が更に制限される場合があります。住居専用地域では、平日のみの営業に制限されるケースもあり、週末の宿泊需要を取り込めないことがあります。
管理の手間と労力がかかる
宿泊施設として運営するには、日常的な清掃や設備のメンテナンスが欠かせません。宿泊者の入れ替わりごとに、寝具類の交換やバスルーム清掃、室内の点検などが必要となります。特に繁忙期には、チェックインとチェックアウトの対応に追われ、時間的な拘束が大きくなります。
設備の不具合や突発的なトラブルにも迅速な対応が求められます。深夜や早朝の緊急連絡にも備える必要があり、個人での管理運営には大きな負担となる可能性があります。
近隣トラブルの可能性がある
宿泊者の生活音や深夜の出入りにより、近隣住民との関係が悪化するリスクがあります。特に、一般住宅地での営業では、騒音や生活マナーに関する苦情が発生しやすくなります。
外国人旅行者の受け入れでは、文化や習慣の違いによるトラブルが生じることもあります。ゴミ出しルールの違反や、公共スペースの使用方法を巡る問題も起こりやすく、近隣コミュニティとの関係維持には継続的な配慮と対応が必要となります。
空き家を使用した民泊経営の初期費用はいくらかかる?

空き家を民泊として活用する際の初期費用は、物件の状態や改修の範囲によって大きく変動します。物件を宿泊施設として運営するために必要な投資内容を把握し、資金計画を立てることが重要です。
必要な改修工事の費用相場
空き家の状態や築年数により、改修工事の規模は異なってきます。一般的な内装リフォームでは、最低でも100万円から300万円程度の費用が必要となります。水回りの設備更新や壁紙の張り替え、床材の交換などが基本的な工事内容となります。
耐震補強や外壁補修が必要な場合は、さらに100万円から500万円程度の追加費用が発生します。また、バリアフリー対応や防音工事を行う場合は、工事範囲に応じて50万円から200万円程度の費用増加が見込まれます。
設備投資の具体的な内容
宿泊者の快適性を確保するための設備投資として、ベッドや寝具類、収納家具などの備品購入が必要です。一室あたり30万円から50万円程度の費用を見込む必要があります。冷蔵庫やテレビ、洗濯機などの家電製品は、一式で20万円から40万円程度の投資が必要となります。
また、無線LANの設置やセキュリティシステムの導入、インターホンの設置なども必須です。これらの通信・セキュリティ関連の設備投資には、15万円から30万円程度の費用がかかります。清掃用具や消耗品などの運営備品の初期調達にも、10万円程度の費用を見込む必要があります。
許認可取得にかかる費用
住宅宿泊事業法に基づく民泊運営の届出手数料は、地域によって異なりますが、一般的に1万円から2万円程度です。ただし、消防法や建築基準法への適合性を確認するための検査費用が別途必要となり、これらの費用は5万円から15万円程度かかります。
行政書士に届出手続きを依頼する場合は、10万円から20万円程度の手数料が発生します。また、衛生管理や防火管理者の資格取得が必要な場合は、講習費用として3万円から5万円程度の追加支出が必要となります。
民泊に向いている空き家の条件とは?

民泊施設として成功するためには、物件の立地条件と建物自体の性能が重要な要素となります。宿泊者のニーズと、運営効率の両面から適切な物件を選定することが、安定した経営につながります。
好立地の具体的な条件
民泊の収益性を左右する立地条件として、観光スポットや交通拠点からのアクセスが重要です。主要な観光地から徒歩15分圏内、または最寄り駅から徒歩10分以内の位置にあることで、宿泊需要を確保しやすくなります。
観光地周辺では、地域の特色や景観を活かせる物件が高い評価を得られます。伝統的な町並みや自然環境に恵まれた立地では、その土地ならではの宿泊体験を提供できます。一方、都市部では、繁華街や商業施設、コンベンション施設へのアクセスの良さが集客につながります。
周辺環境も重要な要素です。飲食店や商店が徒歩圏内にあることで、宿泊者の利便性が高まります。また、深夜でも明るく安全な通りに面していることや、24時間営業のコンビニエンスストアが近くにあることも、宿泊者にとって魅力的な条件となります。
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必要な建物の状態とは
建物の基本性能として、耐震基準を満たしていることが必須条件です。1981年以降の新耐震基準に適合している物件が望ましく、それ以前の建物では耐震診断や補強工事が必要となる可能性があります。建物の構造体に問題がないことや、雨漏りなどの水損がないことも重要です。
設備面では、給排水や電気設備が正常に機能していることが前提となります。特に、給湯設備の性能や、エアコンなどの空調設備の状態は、宿泊者の快適性に直結します。また、インターネット環境の整備が容易な通信インフラも、現代の宿泊施設には不可欠です。
間取りについては、プライバシーを確保できる独立した居室があることが重要です。共用部分と個室のバランスが取れており、複数の宿泊者が快適に過ごせる空間構成が求められます。また、バス・トイレの設備が充実していることや、収納スペースが十分にあることも、運営上の利点となります。
民泊の収益はどのくらい期待できる?

民泊の収益性は、立地や運営方法、サービス内容によって大きく変動します。収支計画を立てる際には、地域特性や季節要因を考慮しながら、現実的な目標設定が重要です。
平均的な稼働率の目安
稼働率は地域や季節により大きな差が生じます。都市部の人気エリアでは年平均60%から70%の稼働率を達成できる一方、地方部では30%から50%程度となることが一般的です。季節による変動も大きく、観光地では繁忙期に80%以上の稼働率を記録することもあります。
観光シーズンやイベント開催時期には稼働率が上昇します。一方、オフシーズンや平日は稼働率が低下するため、年間を通じた平準化が課題となります。インバウンド需要が見込める地域では、海外の休暇シーズンに合わせた営業戦略により、稼働率の向上が期待できます。
平均の民泊収益はどれくらい?
一般的な民泊の宿泊単価は、都市部で一泊あたり8,000円から15,000円程度です。地方部では6,000円から12,000円程度となりますが、特色ある施設では20,000円以上の単価設定も可能です。収容人数や設備の充実度によって、適切な価格帯は変動します。
年間収益の目安として、都市部の物件では、稼働率60%で月額15万円から25万円程度の売上が見込めます。ただし、これは営業日数制限や運営経費を考慮する前の粗利段階での数字となります。季節変動や競合状況により、実際の収益は変動することに注意が必要です。
必要な運営経費の内訳
固定費として、水道光熱費が月額1万円から2万円、通信費が5,000円から1万円程度必要です。また、火災保険料や設備メンテナンス費用として月額1万円から2万円程度を見込む必要があります。清掃サービスを外部委託する場合は、一回あたり5,000円から1万円の費用が発生します。
変動費については、アメニティ類の補充や消耗品の交換費用として、宿泊者一人あたり500円から1,000円程度が必要です。また、予約管理システムの手数料として売上の3%から5%、クレジットカード決済手数料として3%程度が発生します。これらの経費を差し引いた実質的な収益は、売上の40%から50%程度となることが一般的です。
民泊運営の手続きはどうすればいい?

民泊事業を始めるためには、法令に基づく適切な手続きが必要です。運営形態によって必要な許可や届出が異なるため、計画段階での慎重な検討が重要となります。
必要な許可と届出の種類
住宅宿泊事業法(民泊新法)に基づく届出では、所定の様式による申請書の提出が求められます。必要書類には、住宅の図面や設備の配置図、非常用照明器具の配置図などが含まれます。また、消防法に基づく消防用設備等設置届や、建築基準法への適合証明も必要となります。
申請手続きの流れとしては、まず事前相談で要件確認を行い、その後必要書類を揃えて届出を提出します。消防署による現地検査や保健所による衛生検査が実施され、これらに合格することで運営開始が可能となります。届出から営業開始までは、標準的に2週間から1ヶ月程度の期間を要します。
運営形態の選び方
住宅宿泊事業法による運営では、年間営業日数が180日以内という制限がありますが、比較的緩やかな施設基準が適用されます。一般住宅を活用する場合や、小規模での運営を予定している場合は、この形態が適しています。管理業務の一部を住宅宿泊管理業者に委託することも可能です。
旅館業法による運営では、営業日数の制限はありませんが、より厳格な施設基準や衛生管理基準を満たす必要があります。フロント設置や宿泊者名簿の備え付けなど、ホテル・旅館に準じた設備や体制が求められます。観光地での本格的な宿泊施設運営を目指す場合は、この形態を選択することが望ましいでしょう。
両者の選択にあたっては、想定する営業規模や運営体制、投資可能額などを総合的に検討する必要があります。また、物件の立地する地域の条例による規制内容も、運営形態の選択に影響を与える重要な要素となります。地域によっては、住居専用地域での営業制限や、特定の時期・曜日での営業制限が設けられている場合があります。
民泊以外の空き家活用方法は?

空き家の活用方法として、地域特性や建物の状態に応じて、様々な選択肢があります。物件の特徴を活かしながら、持続可能な運営方法を選択することが重要です。
賃貸活用
賃貸活用は、安定した収入を得られる活用方法の一つです。長期賃貸では、契約期間が1年以上となり、安定した家賃収入が期待できます。入居者の定着により、頻繁な募集や内装工事の必要性が低く、管理の手間を抑えることができます。特に、学生や社会人向けの賃貸物件として需要が見込める地域では、高い稼働率を維持しやすい特徴があります。
一方、短期賃貸では、数か月単位の契約で柔軟な運用が可能です。転勤者や工事関係者向けの社宅利用、研修施設としての活用など、多様なニーズに対応できます。家具付きの物件として提供することで、通常の賃貸料金より高い収益を見込むことも可能です。
シェアハウス
シェアハウスは、複数の入居者が共用スペースを共有しながら生活する形態です。若年層を中心に、経済的な住まい方への需要が高まっています。共用リビングやキッチンを設けることで、限られた面積を効率的に活用できます。また、入居者同士のコミュニティ形成により、防犯面でも安心感が生まれます。
運営面では、個室の数や共用設備の充実度によって収益性が変わります。入居者の選定や契約管理、共用部分の清掃維持など、一定の管理業務が発生します。ただし、コミュニティマネージャーを置くことで、入居者間のトラブル防止や施設の適切な利用促進につながります。
店舗転用
空き家を店舗やオフィスとして活用することで、地域の新たな活力を生み出すことができます。カフェやレストランへの転用では、住宅街に不足している飲食サービスを提供できます。古民家の雰囲気を活かした店舗は、特別な空間として差別化が図れます。
オフィスへの転用では、在宅ワークの増加に伴うサテライトオフィスや、起業家向けのシェアオフィスとしての需要が見込めます。改修費用は用途によって異なりますが、建物の構造や設備状況を考慮しながら、必要最小限の投資で開業できる業態を選択することが重要です。また、用途変更に伴う法的手続きや、周辺環境との調和にも配慮が必要となります。
まとめ
空き家の民泊活用は、適切な立地条件と運営体制があれば、維持管理費用の負担軽減と収益確保の両立が可能です。ただし、年間営業日数の制限や日常的な管理業務など、運営上の課題もあります。また、初期投資や許認可の取得など、開業までには様々な準備が必要となります。空き家の状況や地域特性に応じて、民泊以外の活用方法も含めて検討することで、最適な選択が可能になります。投資規模や運営形態を慎重に見極めることで、持続可能な空き家活用を実現できます。