「渋谷で民泊を始めたいけれど、規制が厳しそうで踏み切れない」「初期投資や運営コストが気になる」といった声をよく耳にします。確かに、渋谷区での民泊運営には独自の規制や課題が存在します。しかし、適切な準備と運営体制を整えることで、インバウンド需要を取り込める魅力的な投資先となり得ます。
本記事では、渋谷区で民泊を始めるために必要な情報と、実際の収益性について、運営実績に基づいた具体的なデータとともに解説します。
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渋谷で民泊を始めることはできる?

渋谷区での民泊営業には、特定のルールや制限が設けられています。しかし、適切な手続きと条件を満たせば、十分に実現可能なビジネスといえます。
実際、渋谷区は年間を通じて観光客の需要が高く、民泊運営の好適地として注目を集めています。ただし、具体的な営業条件や地域制限について正しく理解しておく必要があります。
渋谷区の民泊規制と営業可能エリア
渋谷区での民泊営業には、住宅地域と商業地域で異なる規制が適用されます。特に住宅地域では、地域住民との調和を重視した厳格なルールが設けられています。
住宅地域での営業には、建物の構造や防火設備、騒音対策など、細かな要件を満たす必要があります。例えば、非常口の設置や消火器の常備、近隣住民への事前説明なども求められます。
一方、商業地域では比較的緩やかな規制となっています。特に駅周辺の商業地区では、年間を通じた営業が可能なエリアが多く存在します。渋谷駅周辺や表参道、代官山といった観光客の人気エリアでは、インバウンド需要を見込んだ民泊施設が増加傾向にあります。
具体的な営業可能エリアは、渋谷区の用途地域に基づいて定められています。例えば、商業地域に指定されている渋谷駅周辺では、年間営業日数の制限が緩和されているケースが多くみられます。一方、代々木や富ヶ谷などの住宅地では、一定の営業制限が課されています。
渋谷区で民泊を運営するメリットとは?

不動産投資の選択肢として、渋谷区での民泊運営には独自の強みがあります。都内有数の商業エリアである渋谷には、観光客やビジネス客が絶え間なく訪れています。
このような立地特性を活かした収益化が期待できる投資先として、注目を集めています。渋谷区ならではのメリットについて、具体的に見ていきましょう。
訪日外国人の約4割が訪れる人気エリア
渋谷区は、訪日外国人の人気観光スポットとして不動の地位を確立しています。実際に、東京都の調査によると、渋谷区を訪れる外国人観光客は訪日客全体の約40%に達しています。
スクランブル交差点や109など、SNSで話題の観光スポットが多く存在することも、集客の大きな要因です。特に若年層の外国人観光客にとって、渋谷は「クールジャパン」を体験できる象徴的なエリアとして認識されています。
さらに、渋谷区には大規模な商業施設や飲食店が集積しており、観光客の長期滞在にも適しています。買い物や食事、エンターテインメントなど、多様なニーズに応える環境が整っているため、リピーターの獲得も期待できます。
表参道・原宿へのアクセスがいい
渋谷区内の移動は、充実した公共交通機関によって快適にサポートされています。特に表参道や原宿といった人気エリアへは、徒歩圏内でアクセスできる立地が多く存在します。
例えば、表参道までは渋谷駅から徒歩15分程度で到着できます。また、明治神宮前駅を利用すれば、原宿の中心部まで数分でアクセスすることが可能です。このような交通利便性の高さは、宿泊客の満足度向上に直結します。
さらに、代々木公園や明治神宮といった都内有数の観光資源にも近接しています。自然と都市が調和した環境は、長期滞在者にとっても魅力的なポイントとなっています。
賃貸と比べて高い収益が期待できる
渋谷区での民泊運営は、通常の賃貸運用と比較して、より高い収益性を期待することができます。観光需要の高さを背景に、稼働率と宿泊単価の両面で優位性があります。
実際の運営データによると、渋谷区内の民泊施設の平均稼働率は70%を超えており、繁忙期には90%以上に達するケースも少なくありません。宿泊単価についても、立地や設備に応じて柔軟な価格設定が可能です。
また、インバウンド需要の回復に伴い、高単価帯の予約も増加傾向にあります。特に富裕層向けの高級民泊では、一泊あたり数万円の宿泊料金設定も可能です。
マンスリーマンションへの転換も可能
民泊運営の魅力の一つは、市場環境の変化に応じて柔軟な運営形態の変更が可能な点です。例えば、観光需要が落ち込む時期には、マンスリーマンションとして法人需要を取り込むことができます。
特に渋谷区は、IT企業やスタートアップが集積するエリアとして知られています。このため、出張者や転勤者向けの短期滞在需要も安定的に存在します。季節や市況に応じて、民泊とマンスリーマンションを組み合わせることで、リスクを分散しながら収益を最大化することが可能です。
また、長期滞在者向けの需要は年間を通じて安定しているため、収益の平準化にも貢献します。さらに、家具家電付きの物件として運営することで、付加価値を高めることも可能です。
渋谷区で民泊を運営するデメリットとは?

民泊運営に関心を持つ方の中には、収益性の高さばかりに目を向けがちな傾向があります。しかし、実際の運営には独自の課題やリスクが存在します。特に渋谷区では、安全で快適な宿泊環境を確保するために、厳格な規制や運営基準が設けられています。
これらの課題を事前に把握し、適切な対策を講じることが重要です。
厳しい規制による参入障壁の高さ
渋谷区での民泊運営には、通常の賃貸運営とは比較にならないほど多くの規制が存在します。特に住宅地域では、厳格なルールが適用されています。例えば、以下のような営業制限があります。
住居専用地域、文教地区では次の期間、民泊が実施できません。
渋谷区 住宅宿泊事業(民泊)について
- 4月5日から7月20日まで
- 8月29日から10月の第2月曜日の前の週の水曜日まで
- 10月の第2月曜日の前の週の土曜日から12月25日まで
- 1月7日から3月25日まで
この制限に加えて、渋谷区は特区民泊区域ではないため、上限180日の営業しか認められていません。
施設の改修費用も大きな負担となります。消防法や建築基準法に基づく設備投資には、数百万円規模の初期費用が必要になることもあります。
しかし、渋谷はインバウンド需要があるため年間を通して民泊の需要があります。そのため参入障壁の高さはメリットにつながることもあります。
キーボックス使用制限等の独自ルールがある
渋谷区では、一般的な民泊でよく見られるキーボックスの使用が制限されています。これは、不特定多数の人がアクセスできる状況を避け、セキュリティを確保するための措置です。
このため、チェックインの際には原則として対面での鍵の受け渡しが必要となります。24時間体制での対応が求められるため、人件費の増加は避けられません。特に深夜や早朝のチェックインにも対応できる体制を整えるには、シフト制での人員配置が必須となります。
ただし、スマートロックは使用することができます。
10分以内の現地対応が必要
渋谷区の民泊運営では、緊急時に10分以内で現地に到着できる体制の確保が義務付けられています。これは、宿泊者の安全確保と近隣トラブルの迅速な解決を目的とした規定です。
実際の運営では、深夜のノイズクレームや設備トラブルなど、予期せぬ事態への対応が頻繁に発生します。10分以内という時間制限は、事実上、施設の近隣に常駐スタッフを配置する必要があることを意味します。
また、外国人宿泊者とのコミュニケーションにも課題があります。言語の壁により、トラブル対応が複雑化するケースも少なくありません。英語での対応が可能なスタッフの確保は、運営コストを押し上げる要因となります。
このような緊急対応体制の維持には、相当な人件費が発生します。特に、複数の物件を同時に運営する場合、物件ごとに対応可能なスタッフを確保する必要があり、人材確保のコストは更に増加します。
渋谷での民泊の収益はどのくらい期待できる?

渋谷区での民泊運営において、平均利回りは10%から20%の範囲で推移しています。主要駅から徒歩10分圏内の物件では、月間66万円の売上から43万円の利益を計上した実例があり、年間換算で15%を超える利回りが実現可能です。
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渋谷区における平均利回り
渋谷区の民泊物件は以下の特徴があります。
- 平均稼働率:81%~93%
- 平均宿泊単価:2万5千円~2万9,638円
- 月間平均売上:66万円~110万円
物件タイプ | 予想月間利益 | 年間利回り |
---|---|---|
ワンルーム | 13~26万円 | 12~18% |
1LDK | 26~43万円 | 15~22% |
戸建て | 43~72万円 | 18~25% |
初期投資回収期間は物件規模によって異なり、ワンルームで3~5年、戸建て物件で5~8年が目安です。運営コスト(清掃費・光熱費・管理費)は売上の30%程度を見込む必要があり、成功事例では駅徒歩5分圏内の物件で年間520万円の営業利益を達成したケースも報告されています。
競合状況を考慮した差別化戦略として、次の要素が収益向上に直結します。
- 主要観光スポット(渋谷スクランブル交差点・明治神宮)へのアクセス改善
- 多言語対応設備の充実(英語・中国語表記)
- 長期滞在者向け割引プランの導入
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渋谷区での民泊営業に必要なものとは?

民泊事業を渋谷区で始めるには、一般的な民泊新法の要件に加えて、区独自の厳格な基準を満たす必要があります。安全で快適な宿泊環境の提供には、綿密な準備と適切な投資が欠かせません。
実際の申請手続きや運営開始までの道のりを具体的に見ていきましょう。
地域別の規制対応
渋谷区内でも、地域によって適用される規制は大きく異なります。特に住宅地域と商業地域では、求められる対応に明確な違いがあります。
住宅地域での営業には、近隣住民への事前説明が必須となっています。具体的には、半径100メートル以内の全住民に対して、民泊営業の計画内容を書面で通知する必要があります。この際、深夜のチェックインや緊急時の対応方針など、具体的な運営計画も明示しなければなりません。
一方、商業地域では住民説明会の開催で代替可能なケースもありますが、騒音対策には特に厳格な基準が設けられています。防音工事の実施や、騒音計の設置が求められるケースもあります。
消防法の規制も地域によって異なります。特に木造住宅が多い地域では、スプリンクラーの設置や非常口の増設など、追加の防火対策が必要になることがあります。
必要な設備と基準
渋谷区での民泊運営には、以下のような設備基準を満たすことが求められます。
まず、各居室には煙感知器の設置が必須です。さらに、消火器の設置や避難経路図の掲示なども必要です。これらの防災設備は、定期的な点検と記録の保管が義務付けられています。
衛生面では、寝具類の除菌や定期的な清掃が求められます。特にバスルームやキッチンには、商業用の清掃剤を使用した専門的な清掃が必要です。
また、宿泊者の快適性を確保するため、以下の設備も必須となっています。
・エアコンの設置(冷暖房機能)
・インターネット環境の整備
・タオルや歯ブラシなどのアメニティ用品
・食器類や簡易な調理器具
・洗濯機(建物内での利用が可能であること)
これらの設備投資には、物件の状態にもよりますが、一般的に100万円から300万円程度の費用が必要です。
運営管理の要件
渋谷区では、鍵の受け渡し方法に特に厳格なルールが設けられています。一般的な民泊でよく見られるキーボックスの使用は原則として禁止されており、対面でのチェックインが基本となります。
具体的な運営要件として、以下のような体制整備が求められます。
・24時間対応可能なフロント業務
・緊急時の10分以内現地到着体制
・多言語対応可能なスタッフの配置
・本人確認書類の確認と保管
・宿泊者名簿の作成と管理
これらの要件を満たすため、多くの運営者は専門の管理会社に業務を委託しています。委託費用は一般的に売上の15〜20%程度となりますが、人材確保や緊急対応のリスクを考慮すると、むしろコスト効率の高い選択といえます。
また、施設の鍵は複製防止機能付きの特殊なものを使用する必要があります。予備鍵の管理も厳重に行い、受け渡し記録を残すことが求められています。
まとめ
渋谷区での民泊運営は、厳格な規制と高い参入障壁が存在する一方で、立地の優位性を活かした高収益が期待できるビジネスです。年間180日という営業制限はあるものの、適切な運営管理により10〜15%程度の利回りも視野に入れることができます。
ただし、成功の鍵を握るのは、24時間対応できる管理体制の構築と、地域特性に応じた細やかな規制対応です。投資判断の際には、初期費用や運営コストを含めた総合的な検討が必要になります。渋谷区の民泊市場は、インバウンド需要の回復とともに、さらなる成長が期待される分野といえるでしょう。
【参考】
バトンズ 【渋谷区/営利520万円/インバウンド向け旅館業民泊事業】高利益恵比寿旅館業民泊
渋谷区 住宅宿泊事業(民泊)について