空き家や空き部屋を活用して副収入を得たい、不動産投資の新しい可能性を探りたいとお考えではないでしょうか。民泊事業は、少額の初期投資で始められ、一般的な賃貸経営より高い利回りが期待できる投資方法として注目を集めています。一方で、物件の管理や運営面での課題も存在するため、メリットとデメリットを十分に理解することが重要です。

本記事では、民泊事業の特徴から具体的な収益性、運営上の注意点まで、実践的な情報をご紹介します。
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民泊とは?

一般住宅を活用して旅行者に宿泊サービスを提供する民泊は、新しい宿泊ビジネスとして注目を集めています。従来の宿泊施設とは異なる特徴や運営方法があるため、詳しく見ていきましょう。

住宅を活用した宿泊サービスの仕組み

住宅宿泊事業法に基づく民泊は、一般の住宅を活用して旅行者に宿泊場所を提供するサービスです。この制度により、個人でも適切な届出を行えば、自宅の空き部屋や空き家を宿泊施設として運営することが可能になりました。

民泊の運営方法には、自ら管理する方法と民泊管理業者に委託する方法があります。自己管理型の場合、予約管理から清掃、緊急時対応まで全てを自身で行う必要があるため、手間はかかりますが収益性を高められます。

管理業者に委託する場合は、物件の管理や運営を専門家に任せることができます。手数料は発生しますが、確実な運営と安定したサービス提供が可能になり、特に不動産投資や副業として民泊を始める方に適しています。

民泊の将来性はどうなの?

観光庁の統計によると、民泊市場は年々拡大傾向にあり、特に都市部での需要が高まっています。宿泊施設の多様化が進む中、民泊市場の将来性について具体的に見ていきましょう。

民泊市場が注目されている理由

国内の宿泊施設不足を背景に、民泊への注目が集まっています。従来型のホテルや旅館だけでは、増加する宿泊需要に対応することが難しい状況です。

民泊市場の拡大には、多様化する宿泊ニーズも大きな影響を与えています。観光庁の調査では、宿泊者の約40%が「現地の生活を体験したい」という理由で民泊を選択しています。

競合状況を見ると、都市部では新規参入が活発化しています。一方で、地方エリアでは物件数が限られているため、適切な運営を行えば安定した需要を確保することが可能です。

インバウンド需要の回復による影響

観光庁の発表によれば、訪日外国人観光客数は2024年には年間36,869,900人でした。また、2030年に訪日外国人旅行者数を6,000万人を目指しており、民泊需要は更なる拡大が予測されます。

日本政策投資銀行の調査によると外国人観光客の大半が「現地の文化体験」を重視する傾向にあり、民泊はこのニーズに合致するサービスとして注目されています。特にアジア圏からの観光客は、民泊の利用率が高く、リピート利用も増加しています。

言語対応やコミュニケーション面での課題はありますが、管理会社との連携や翻訳ツールの活用により、外国人観光客の受け入れ体制は着実に整備されています。これにより、民泊事業者の収益機会は更に広がると予測されます。

民泊のメリットって何がある?

メリット

不動産投資の新しい形態として注目を集める民泊には、従来の賃貸経営にはない独自の利点があります。収益性や運営の柔軟性など、具体的なメリットについて詳しく解説します。

少額から始めることができる

民泊事業は、既存の住宅を活用できるため、初期投資を抑えた事業スタートが可能です。一般的な賃貸物件の準備には大規模な改装工事が必要になりますが、民泊の場合は最低限の設備投資で開業できます。

具体的な初期費用の内訳を見ると、必要最低限の家具や備品を含めても100万円程度で開業が可能です。実際の費用例として、ベッド・寝具(20万円)、家電製品(30万円)、インテリア・調度品(20万円)、その他設備(30万円)となっています。既存の家具や設備を活用すれば、さらなるコスト削減も可能です。

民泊専用の物件管理システムも、月額数千円からの利用が可能です。これにより、予約管理や決済、清掃手配などの運営業務を効率的に行うことができます。
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他の投資より期待できる利回りが高い

民泊事業の最大の魅力は、高い投資利回りにあります。一般的な賃貸物件の利回りが3〜5%程度であるのに対し、民泊では適切な運営により15%以上の利回りを期待することができます。

具体的な収益例として、都心の1Kマンション(2,000万円)で民泊を運営した場合、年間収入600万円、経費240万円で、年間360万円の純利益が見込めます。これは投資利回りに換算すると18%に相当し、従来の不動産投資を大きく上回ります。

立地や物件の特性によって収益性は変動しますが、適切な価格設定と運営戦略により、安定した高収益を実現することが可能です。
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柔軟な価格設定と運営が可能

民泊の大きな特徴として、需要に応じた柔軟な価格設定があります。季節性やイベント開催時期に合わせて宿泊料金を調整することで、収益を最大化することができます。

実際の運用例として、観光シーズンや大型イベント時には通常料金の2〜3倍の価格設定が可能です。逆にオフシーズンは価格を抑えることで稼働率を維持し、年間を通じた安定収益を確保できます。

また、短期・中期・長期など、様々な宿泊期間に対応できることも民泊の強みです。この柔軟性により、市場環境の変化に迅速に対応することが可能になります。

世界中の観光客との交流が可能

民泊事業では、世界各国からの宿泊客を受け入れることができ、国際交流の機会が広がります。これは単なる収益だけでなく、文化交流という付加価値を生み出します。

外国人観光客との交流を通じて、異文化への理解を深めることができ、グローバルな視点やネットワークの構築にもつながります。また、リピーターの獲得にもつながり、安定した集客基盤の形成に寄与します。

不動産価値向上することができる

民泊運営を通じて物件の設備やサービスを充実させることで、不動産の資産価値向上が期待できます。適切な維持管理や設備投資により、物件の魅力度が高まり、将来的な売却や転用の際にも有利に働きます。

具体的には、内装のリノベーションやスマートロックの導入、Wi-Fi環境の整備などにより、物件の商品価値が向上します。これらの投資は、民泊事業の収益性向上と資産価値の上昇という二重の効果をもたらします。

空き家・空室を有効活用できる

増加する空き家問題の解決策として、民泊は効果的な選択肢となります。相続物件や使用頻度の低い別荘なども、民泊として活用することで収益を生み出すことができます。

実際の活用例として、地方の空き家を改装して民泊施設とし、月額20万円以上の収益を上げている事例も存在します。適切な運営により、維持費の負担を軽減しながら、新たな収入源として機能させることが可能です。

また、賃貸物件の空室期間を民泊として活用することで、収益機会の損失を最小限に抑えることができます。この柔軟な運用方法は、不動産オーナーにとって大きなメリットとなっています。
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民泊のデメリットは?

デメリット

民泊事業には魅力的な収益機会がある一方で、運営上の課題やリスクも存在します。実際の運営現場で発生している問題や対応策について、具体的に解説していきます。

物件の損傷や汚損のリスク

民泊物件では、宿泊者による故意または過失の物件損傷が深刻な問題となっています。一般的な賃貸物件と比べて、短期滞在者が頻繁に入れ替わるため、設備や備品の破損リスクが格段に高くなります。

実際の損傷事例として、家具や電化製品の破損、壁や床材の傷付け、水回りの故障などが報告されています。特に深刻な事例では、修繕費用が100万円を超えるケースも発生しています。

これらのリスクに対しては、損害保険への加入が必須となります。民泊専用の保険商品も登場しており、物件損傷だけでなく、賠償責任や休業補償までカバーする包括的な保障が可能です。また、宿泊規約の整備や防犯カメラの設置など、予防的な対策も重要になります。

近隣住民とのトラブルがある

民泊施設の運営では、近隣住民との関係性が重要な課題となります。深夜の騒音や、ゴミ出しルールの違反、共用部分の不適切な使用など、様々なトラブルが報告されています。

特に集合住宅での民泊運営では、エレベーターの過剰使用や、セキュリティ面での不安から、住民からの苦情が多く発生しています。実際のトラブル事例では、管理組合からの営業中止要請や、近隣住民による行政への通報なども発生しています。

これらの問題に対しては、事前の住民説明会の開催や、24時間対応可能な管理体制の整備が必要です。また、宿泊者向けの詳細なハウスルールの作成と、確実な伝達方法の確立も重要になります。
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年間営業日数の制限がある

住宅宿泊事業法(民泊新法)では、年間営業日数が180日以内に制限されています。この規制により、事業の収益性や運営計画に大きな影響が生じます。

具体的な影響として、繁忙期に需要があっても営業日数の制限により受け入れができない状況が発生します。また、地域によっては条例でさらに厳しい営業制限が設けられているケースもあり、事業計画の立案には慎重な検討が必要です。

この制限に対応するためには、オフシーズンの稼働率向上や、営業可能日の効率的な配分が重要になります。また、複数物件を運営することで、収益の安定化を図る戦略も有効です。

管理運営の手間と負担がかかる

民泊の運営には、予約管理から清掃、緊急対応まで、多岐にわたる業務が発生します。特に自己管理型の運営では、24時間365日の対応が必要となり、個人での運営には大きな負担がかかります。

具体的な業務内容として、チェックイン・チェックアウト対応、室内清掃、リネン交換、設備メンテナンス、予約・決済管理、問い合わせ対応など、ホテル並みのオペレーションが求められます。さらに、外国人宿泊者への対応では、言語面でのコミュニケーション課題も発生します。

これらの負担を軽減するためには、民泊管理会社への業務委託や、IoT機器の活用による効率化が有効です。ただし、管理委託料として売上の20〜30%程度が必要となるため、収益面での検討も重要です。

また、適切な予約システムの導入や、マニュアルの整備により、業務の標準化を図ることも効率化の鍵となります。
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民泊の収益はどのくらい期待できる?

運用

民泊事業の収益性は、立地や運営方法によって大きく変動します。ここでは、実際の運営データに基づいて、必要な投資額から期待できる収益まで、具体的な数字を交えて詳しく解説します。
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必要な初期投資と運営コスト

民泊を始める際の初期投資は、物件の状態や設備の充実度によって異なりますが、一般的な1DKマンションの場合、以下のような費用が必要になります。

1DKマンションを民泊として運営を開始する際の初期投資の内訳として、宿泊に必要な基本的な家具・家電費用が50万円程度必要です。具体的には、ベッド(10万円)、エアコン(8万円)、冷蔵庫(5万円)、洗濯機(5万円)、テレビ(5万円)、電子レンジ(2万円)、その他の小物家電(5万円)などが含まれます。

インテリアや備品類には30万円程度の投資が必要です。これには、カーテン(3万円)、照明器具(5万円)、食器類(3万円)、寝具一式(5万円)、タオル類(2万円)、インテリア小物(7万円)、その他生活用品(5万円)が含まれます。

運営開始時の諸経費として20万円程度を見込む必要があります。これには、民泊届出費用(1万円)、物件の清掃・補修費(5万円)、写真撮影費用(3万円)、スマートロック設置(5万円)、Wi-Fi導入(3万円)、その他経費(3万円)が含まれます。

月々の運営費用としては、以下のような経費が発生します。清掃費(1回あたり5,000円×月20回=10万円)、光熱費(3万円)、消耗品費(2万円)、インターネット・通信費(1万円)、保険料(1万円)、予約サイト手数料(売上の3%程度)など、月額20万円程度の経費を見込む必要があります。

実際の収益シミュレーション

都心部での1DK(25㎡)の民泊運営における具体的な収益シミュレーションを解説します。昨今の市場データに基づく現実的な数字を用いて、詳細な試算を示します。

年間の売上について、平均宿泊単価を15,000円、稼働率を80%(月24日程度)と設定した場合、月額の売上は36万円(15,000円×24日)となります。年間では432万円の売上が見込めます。

この売上から、月々の運営経費として清掃費(100,000円)、光熱費(30,000円)、消耗品費(20,000円)、通信費(10,000円)、保険料(10,000円)、予約サイト手数料(売上の3%:約11,000円)を差し引きます。さらに、年間の修繕費(240,000円)や固定資産税(120,000円)なども考慮する必要があります。

ただし、この収益を実現するためには、以下の条件が必要不可欠です。第一に、駅から徒歩10分以内の好立地であること。第二に、清潔で快適な室内環境の維持。第三に、適切な価格戦略とマーケティング。さらに、営業の日数制限がない特区民泊であることが求められます。特区民泊でなくても賃貸よりも利回りが高いため、民泊運用がおすすめです。

民泊と他の不動産活用を比べてみよう

違い

不動産投資には様々な活用方法がありますが、それぞれに特徴や運営方法が異なります。ここでは、民泊と他の不動産活用方法を詳しく比較し、それぞれのメリット・デメリットを具体的に解説します。

賃貸経営との比較

一般的な賃貸経営と民泊では、収益構造と運営方法に大きな違いがあります。賃貸経営は、長期契約による安定した家賃収入が特徴です。一方、民泊は短期での利用により、より高い収益を目指すことができます。

賃貸経営の収益性について、都心の1DKマンション(2,500万円)を例に見てみましょう。月額家賃8万円の場合、年間収入は96万円です。これに対し、同じ物件を民泊として運営した場合、年間収入は400万円以上が期待できます。

ただし、賃貸経営では入居者募集や退去対応は数年に1回程度ですが、民泊では宿泊者の入れ替わりが頻繁にあり、その都度の清掃や設備確認が必要です。また、賃貸では入居者自身が光熱費を負担しますが、民泊では運営者側の経費となります。

旅館業との比較

旅館業と民泊は、どちらも宿泊サービスを提供する事業ですが、法規制や必要な設備に大きな違いがあります。旅館業は旅館業法に基づく厳格な基準が適用され、専用の建物や設備が必要です。

旅館業では、フロント施設や共用部分の設置が必須であり、初期投資は物件規模にもよりますが、最低でも5,000万円以上が必要です。これに対し民泊は、一般住宅を活用できるため、100万円程度の初期投資で開業が可能です。

運営面では、旅館業は年間営業日数の制限がなく、専門スタッフによる充実したサービス提供が可能です。一方、民泊は年間180日以内という営業制限があり、サービス内容も宿泊に特化したものとなります。

シェアハウスとの比較

シェアハウスは、複数の入居者が居住空間を共有する形態で、民泊とは異なる収益構造と運営特性を持ちます。シェアハウスは中長期の入居を前提とし、コミュニティ形成が重要な要素となります。

収益面では、シェアハウスは一室あたりの月額家賃が4〜6万円程度で、安定した収入を得られます。一方、民泊は宿泊単価が高く、繁忙期には通常の賃料の3倍以上の収入を得ることも可能です。

運営面での大きな違いは、入居者の管理方法です。シェアハウスでは、入居者同士のコミュニティ形成やトラブル対応が重要な業務となります。対して民泊では、短期滞在者への対応が中心となり、清掃や設備管理により多くの労力が必要です。

また、シェアハウスは居住用途として扱われるため、建築基準法や消防法の規制が比較的緩やかです。一方、民泊は宿泊施設としての基準を満たす必要があり、消防設備や非常口の設置など、より厳格な規制が適用されます。

まとめ

民泊事業は、少額からの参入が可能で、高い投資利回りが期待できる不動産活用法です。特に、年間15%以上の利回りや柔軟な価格設定による収益最大化など、従来の賃貸経営にはないメリットがあります。一方で、物件の管理負担や、年間営業日数の制限、近隣トラブルなど、運営上の課題も存在します。事業を成功させるためには、これらのメリット・デメリットを十分に理解し、適切な運営戦略を立てることが重要です。また、立地条件や物件の特性、運営体制の整備など、事業開始前の綿密な準備が成功の鍵となります。

参考

JNTO 訪日外客数(2024年12月および年間推計値)
観光庁 令和4年3月 これまでの議論の経過について