民泊事業の運営には、光熱費や清掃費、保険料など様々な費用が発生します。特に2018年の新法施行以降、運営コストが上昇傾向にあるため、事前に具体的な費用を把握することが重要です。

また、季節による需要の変動や予約状況によってランニングコストも大きく変化するため、年間を通じた収支計画の立案が必要不可欠です。

この記事では、民泊のランニングコストの詳細と、具体的な削減方法について解説します。

民泊のランニングコストはいくらかかる?

マネー ランニングコスト

民泊事業の収益性を左右する重要な要素として、ランニングコストの把握は欠かせません。物件の規模や立地、サービス内容によって費用は変動するため、詳細な分析と計画が必要になります。

それでは具体的な費用の内訳と相場について見ていきましょう。

民泊の総運営費用の相場と目安

一般的な1DK〜2LDKの民泊物件における月間の総運営費用は、以下のようなものがかかります。

  • 光熱費
  • 清掃費用
  • 通信費
  • 消耗品費
  • 保険料
  • システム利用料

東京都23区内の場合、月間運用費用は、15万円から25万円の範囲かかります。

光熱費は1物件あたり月額1万2000円から2万円程度発生します。宿泊者の利用頻度や季節による変動があるため、エアコンの使用が多い夏季と冬季は特に注意が必要です。

清掃費用は1回の清掃で8000円から1万2000円が相場です。稼働率にもよりますが、月間の総清掃費用は10万円前後になることも珍しくありません。

通信費は高速Wi-Fiの提供が標準となっているため、月額5000円から8000円程度必要です。安定した通信環境の確保は、宿泊者満足度に直結する重要な要素となります。

消耗品費は月額5000円から1万円程度です。タオル、シーツ、アメニティ類の補充や交換が定期的に必要になるため、在庫管理を適切に行う必要があります。

保険料は月額3000円から5000円程度です。火災保険に加えて、民泊専用の保険への加入も検討が必要です。宿泊者のトラブルによる損害も補償範囲に含める必要があります。

システム利用料は予約管理や決済システムの利用で月額1万円前後発生します。複数のプラットフォームを利用する場合は、それぞれの手数料も考慮に入れる必要があります。

これらの費用は物件の規模や提供するサービス内容によって変動するため、事前に詳細な収支計画を立てることが重要です。また、突発的な修繕費用や設備の更新費用も考慮に入れた資金計画が必要になります。

民泊の固定費と変動費の内訳は?

グラフ

民泊事業における収支を正確に把握するには、固定費と変動費を明確に区分して管理することが重要です。固定費は稼働率に関係なく発生する費用であり、変動費は宿泊者数に応じて増減する費用です。

それぞれの費用項目について、具体的な金額と管理のポイントを解説します。

固定費の具体的な費用項目と金額

物件の賃借料は、立地や広さによって大きく異なります。東京23区内の1DK~2LDKの物件では、月額8万円から15万円が一般的な相場です。物件選定時には、想定される収益から賃借料を差し引いた利益率を慎重に検討する必要があります。

インターネット回線使用料は、光回線の場合、月額5000円から8000円程度発生します。安定した通信環境の確保は宿泊者満足度に直結するため、通信速度と価格のバランスを考慮した契約プランの選択が必要です。

火災保険料は建物の構造や補償内容により異なりますが、月額3000円から5000円程度です。民泊専用の賠償責任保険には、宿泊者の故意や過失による損害も補償対象となる商品を選択することが推奨されます。

システム利用料は予約管理システムやチャネル管理ツールの利用により、月額1万円前後発生します。複数のプラットフォームでの販売を行う場合は、一元管理できるシステムの導入により業務効率化を図ることができます。

変動費の詳細

光熱費は宿泊者の利用状況により大きく変動します。1物件あたり月額1万2000円から2万円程度を想定する必要があります。エアコンの使用が増える夏季と冬季は、前年同期比で30%程度の上昇が見込まれます。

清掃費用は1回あたり8000円から1万2000円が相場です。稼働率80%の場合、月間20回程度の清掃が必要となり、月額16万円から24万円の費用が発生します。清掃業者との長期契約により、スケール料金の適用で費用削減が可能です。

消耗品費は宿泊者数に比例して増加します。タオル類は1セット500円程度、アメニティ類は1セット300円程度を想定し、月間延べ宿泊者数から必要数を算出します。在庫切れによるクレームを防ぐため、適正在庫量の維持と発注タイミングの管理が重要です。

これらの変動費は季節要因や予約状況により増減するため、月次での実績管理と予算管理が必要不可欠です。特に繁忙期は予備の消耗品確保や、清掃スタッフの確保など、先を見据えた準備が求められます。

季節によるランニングコスト変動はどのくらい?

変動

民泊事業のランニングコストは、季節や時期によって大きく変動します。需要の増減に伴う稼働率の変化や、気候による光熱費の変動が収支に影響を与えます。

事業の安定運営には、年間を通じた収支計画が必要不可欠です。それでは各時期の特徴と対策について詳しく見ていきましょう。

繁忙期の特徴

繁忙期における総運営コストは、閑散期と比較して40%から60%増加します。特に夏季の7月から8月、冬季の12月から1月は稼働率が80%を超えることも珍しくありません。

清掃費用は予約の集中により、通常期の1.5倍程度まで上昇します。1日に複数回の清掃が必要となるため、清掃スタッフの確保と効率的なスケジュール管理が重要になります。また、緊急の清掃依頼には割増料金が発生するため、計画的な清掃予約が必須です。

光熱費は夏季のエアコン使用により、通常期の2倍近くまで上昇します。特に8月は1物件あたり月額3万円から4万円程度の電気代が発生します。冬季の暖房費用も同様に、通常期の1.5倍程度まで増加する傾向にあります。

閑散期の特徴

閑散期の2月から3月は稼働率が30%程度まで低下することもあります。この時期の総運営コストは、繁忙期の半分程度まで抑えられます。

清掃費用は予約数の減少により、月額5万円から8万円程度まで低下します。この期間は定期的な大掃除や設備メンテナンスの実施に適しています。計画的なメンテナンスにより、繁忙期のトラブルを未然に防ぐことができます。

光熱費は春季と秋季で最も抑えられ、1物件あたり月額8000円から1万円程度です。エアコンの使用頻度が低下するため、電気代を大幅に節約できます。この時期は省エネ設備の導入や断熱対策の実施に適しています。

時期別の変動

4月から5月のゴールデンウィーク期間は、稼働率が一時的に上昇します。この時期は、通常期と比較して運営コストが20%から30%増加します。連休中の清掃スタッフ確保が課題となるため、早期からの手配が必要です。

6月から7月の梅雨時期は、除湿器の使用により電気代が増加します。カビ対策や換気設備の強化が必要となるため、設備管理コストも上昇します。この時期は特に、室内環境の管理に注意が必要です。

9月から11月は比較的安定した稼働率となり、運営コストも平準化します。この時期は年末年始の繁忙期に向けた準備期間として、計画的な在庫管理や設備点検を実施することが推奨されます。

民泊の収益を上げるための効果的な方法とは?

step

民泊事業の収益向上には、コスト削減と業務効率化の両面からのアプローチが重要です。そのため、システムやサービスを効果的に活用しながら、運営の最適化を図ることが必要となります。

ここでは具体的な収益改善の方法について解説します。

効率的な清掃システムの構築

清掃業務の効率化により、大幅なコスト削減が可能となります。なぜなら、清掃費用は運営コストの中で最も大きな割合を占めているからです。そこで、清掃スケジュールの最適化と作業の標準化が重要になります。

清掃作業の標準化には、チェックリストの作成とマニュアル化が有効です。このように体系化することで、清掃品質の均一化と作業時間の短縮が実現できます。また、清掃道具や洗剤類の配置を工夫することにより、作業効率が20%程度向上します。

複数の物件を運営している場合は、清掃スタッフの移動時間を考慮したルート設定が効果的です。そのため、物件の所在地を考慮したエリア別の担当制を導入することで、1日あたりの清掃件数を増やすことができます。

光熱費を抑えるために省エネ対策を行う

光熱費の削減には、設備の省エネ化と利用ルールの設定が効果的です。まず、LED照明への切り替えにより、電気代を30%程度削減することが可能です。さらに、人感センサーの設置により、不要な照明の点灯を防ぐことができます。

エアコンの設定温度は、夏季28度、冬季20度を推奨します。そのため、温度設定の制限機能付きリモコンの導入により、過度な冷暖房使用を防ぐことができます。加えて、断熱フィルムの設置や二重窓の採用により、空調効率が15%程度改善されます。

給湯設備は、深夜電力を活用した電気温水器の導入が効果的です。このように、電力料金の安い時間帯に温水を作ることで、給湯にかかる電気代を40%程度削減することが可能です。

消耗品を効率よく仕入れる

消耗品の仕入れコストは、発注量と仕入先の選定により大きく変動します。したがって、年間使用量を予測し、まとめ買いによる単価削減を図ることが重要です。特に、タオルやシーツなどの洗濯頻度の高いアイテムは、3ヶ月分をまとめて購入することで、15%程度のコスト削減が可能です。

アメニティ類は、オリジナル商品の開発も検討に値します。なぜなら、独自性の高い商品は宿泊者の満足度向上につながるだけでなく、大量発注による単価削減も実現できるからです。また、近隣の民泊事業者と共同購入を行うことで、さらなるコスト削減が可能となります。

予約管理を自動化する

予約管理の自動化により、人件費の削減と業務効率の向上が実現できます。そのため、チャネルマネージャーの導入により、複数の予約サイトの一元管理が可能となります。これにより、予約の重複を防ぎ、稼働率の最適化を図ることができます。

スマートロックの導入も効果的です。なぜなら、チェックインの自動化により、深夜の対応が不要となるためです。また、清掃スタッフへの鍵の受け渡しも不要となり、業務効率が30%程度向上します。

民泊運営代行サービスを使用して稼働率を上げる

運営代行サービスの活用により、プロフェッショナルなノウハウを活用できます。その結果、物件の魅力的な写真撮影やプロフィール作成により、予約率が向上します。加えて、24時間対応のカスタマーサービスにより、宿泊者満足度の向上も期待できます。

価格設定の最適化も重要です。したがって、市場動向や競合物件の価格を分析し、需要に応じた柔軟な価格設定を行うことで、稼働率と収益の最大化が可能となります。また、リピーター獲得のための割引プランの設定も、安定した予約確保に効果的です。
関連:【手間をかけずに運営ができる】民泊運営代行サービスとは?使用するメリット、デメリットなどを解説

まとめ

民泊事業の安定運営には、ランニングコストの正確な把握と効率的な運営体制の構築が鍵となります。総運営費用は物件の規模や立地により異なりますが、1DK~2LDKの物件では月額15万円から25万円程度を見込む必要があります。

収益性を高めるためには、清掃システムの効率化や省エネ設備の導入、消耗品の計画的な仕入れなど、複数の視点からコスト削減に取り組むことが重要です。

また、繁忙期と閑散期での収支変動に備えた資金計画も欠かせません。これらの要素を総合的に管理することで、持続可能な民泊運営が実現できます。