賃貸物件での民泊運営に興味はあるものの、法的な手続きや収益性、リスクについて不安を感じていませんか?実は、賃貸物件を活用した民泊事業には、物件購入と比べて初期投資を抑えられるメリットがあります。
この記事では、賃貸物件で民泊を始めるために必要な具体的な手順や、成功のポイント民泊投資は副業として稼ぐことができるの?時間を確保するためのコツなど解説!を詳しく解説します。
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賃貸物件で民泊を始めることができる?

賃貸物件での民泊事業は、住宅宿泊事業法(民泊新法)に基づいて運営する必要があります。この法律では、年間提供日数が180日以内という制限が設けられています。また、物件の所在地によって自治体独自の規制が追加されることもあるため、開業前に必ず確認が必要です。
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管理組合や大家さんの承諾が必須
賃貸物件で民泊を始めるには、まず大家さんからの承諾を得ることが必要不可欠です。大家さんとの交渉では、以下の3点を明確に説明することが求められます。
第一に、民泊事業の具体的な運営計画を提示することで、大家さんの不安を解消する必要があります。近隣住民とのトラブル防止策や、緊急時の対応体制など、具体的な運営方針を説明することで、信頼関係を築くことができます。
第二に、賃貸借契約の変更内容について、詳細な協議を行う必要があります。民泊運営に伴う家賃の見直しや、原状回復の条件など、契約変更に関する具体的な提案を準備することが重要です。
第三に、マンションの場合は管理組合の承認も必要となります。管理規約で民泊が禁止されていないことを確認し、必要に応じて管理組合との協議も行わなければなりません。管理組合から承認を得るためには、他の居住者への配慮や、セキュリティ面での対策を具体的に示すことが求められます。
賃貸物件で民泊を始めるメリットとは?

賃貸物件を活用した民泊事業には、物件所有にかかる負担を抑えながら宿泊事業を展開できる大きな利点があります。不動産投資とは異なり、物件購入の必要がないため、比較的少額の資金で事業を開始することができます。
さらに、賃貸物件には以下のような具体的なメリットがあります。
初期投資を抑えて開業できる
賃貸物件での民泊開業では、物件購入費用が不要なため、初期投資を大幅に抑えることができます。一般的な初期費用の内訳は、敷金・礼金などの賃貸契約費用が15万円から30万円程度、内装や家具などの設備投資が50万円から100万円程度となります。
物件を購入する場合と比較すると、数千万円単位の投資を回避できるため、事業リスクを最小限に抑えることが可能です。また、運転資金も含めた開業資金は、200万円程度から準備することができます。
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物件の維持管理費用が少ない
賃貸物件の場合、建物の大規模修繕や設備の更新など、高額な維持管理費用は大家さん負担となります。そのため、運営者は日常的な清掃や消耗品の交換など、必要最低限の維持管理費用のみを負担すればよいことになります。
月々の維持管理費用は、清掃費用が2万円から3万円、消耗品費が1万円程度、設備メンテナンス費用が1万円程度と試算されます。これにより、収益から経費を差し引いた実質的な利益を確保しやすい事業構造となっています。
失敗時のリスクが限定的
賃貸物件での民泊事業は、収益が見込めない場合や事業継続が困難になった際の撤退が比較的容易です。契約期間満了時に解約するか、転貸借契約に基づいて他の運営者に引き継ぐことができます。
撤退時の損失は、主に内装や設備への投資額に限定されるため、物件を所有する場合と比べてリスクが大幅に軽減されます。また、物件の売却や転用にかかる手続きも不要なため、スムーズな事業整理が可能となります。
複数物件での展開が容易
賃貸物件を活用することで、初期投資を抑えながら複数の物件で民泊事業を展開することができます。需要の高いエリアや、季節性のある観光地など、立地特性に応じて戦略的に物件を確保することが可能です。
複数物件の運営により、稼働率の変動や収益のブレを平準化することができます。また、清掃やメンテナンスなどの業務を効率化することで、スケールメリットを活かした収益性の向上も期待できます。
立地や需要に応じた柔軟な運営が可能
賃貸物件は、観光スポットや交通拠点へのアクセスなど、立地条件に応じて物件を選択することができます。また、市場動向や需要の変化に合わせて、柔軟に物件を入れ替えることも可能です。
繁忙期には客室単価を上げ、閑散期にはプロモーション料金を設定するなど、需要に応じた価格戦略を取ることができます。さらに、長期滞在者向けの月極料金の設定や、観光客向けの体験プログラムの提供など、多様な収益機会を創出することができます。
賃貸物件で民泊を始めるデメリットは?

賃貸物件での民泊運営には、物件所有者との関係性や運営上の制約など、特有の課題が存在します。これらの課題に適切に対応することが、安定的な事業運営の鍵となります。
民泊事業を始める前に、以下のようなデメリットを十分に理解し、対策を検討する必要があります。
賃料が通常より割高になる
民泊用途での賃貸契約では、通常の居住用賃貸と比較して家賃が20%から30%程度高くなる傾向があります。これは、民泊利用による建物の損耗が早まることや、他の入居者への影響を考慮した上乗せ分となります。
物件によっては、民泊営業に伴う管理費や共益費も追加で発生することがあります。さらに、契約時には増額された敷金や保証金を求められることも一般的です。そのため、収益計画を立てる際には、これらの追加コストを考慮に入れた採算性の検討が必要不可欠です。
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物件改装の制限がある
賃貸物件では、内装工事やリノベーションに厳しい制限が設けられることが一般的です。壁や床の変更、設備の取り付けなど、建物に影響を与える工事には大家さんの承諾が必要となります。
また、承諾を得られた場合でも、退去時の原状回復義務があるため、投資回収を見据えた改装計画を立てる必要があります。特に、スマートロックの設置やセキュリティシステムの導入など、民泊に必要な設備改修については、事前に詳細な協議が求められます。
契約更新時のリスクがある
賃貸借契約の更新時期には、民泊営業の継続可否や賃料の見直しなど、事業継続に関わる重要な判断を迫られます。大家さんの意向変更や、マンションの管理規約改定により、突然の営業停止を余儀なくされるリスクも存在します。
特に、契約期間が2年という一般的な賃貸借契約では、投資回収や事業の長期計画を立てにくい面があります。そのため、契約更新時のリスクを軽減するために、大家さんとの良好な関係維持や、長期契約の締結を検討する必要があります。
近隣トラブルの責任問題
民泊利用者による騒音や、ゴミ出しルール違反など、近隣トラブルが発生した場合の対応責任は、基本的に運営者が負うことになります。特に、マンションやアパートでは、他の入居者との関係性に細心の注意を払う必要があります。
トラブル発生時の緊急対応体制の整備や、利用者への注意事項の徹底など、予防的な取り組みが重要です。また、賠償責任保険への加入や、専門的な管理会社との連携など、リスクヘッジの仕組みづくりも必要不可欠です。
収益が家賃を下回るリスクがある
民泊の稼働率や単価は、季節や市場環境によって大きく変動する可能性があります。特に、オフシーズンや競合物件の増加により、月々の収入が固定費である家賃を下回るリスクが存在します。
収支が悪化した場合でも、賃料の支払いは継続的な義務となるため、安定的な運転資金の確保が必要です。また、清掃費用やメンテナンス費用など、固定的な運営経費も考慮すると、収益確保のハードルはさらに高くなります。そのため、入念な市場調査と、余裕を持った資金計画の策定が重要となります。
賃貸物件で民泊を始めるには何が必要?

民泊事業を適法に運営するためには、法令で定められた様々な要件を満たす必要があります。手続きの不備や設備の不足は、行政指導や営業停止につながる可能性があるため、開業前に慎重な準備が求められます。
それでは、具体的な必要要件について説明します。
必要な許認可
民泊事業を始めるには、住宅宿泊事業法に基づく届出が必要不可欠です。まず、事業者は観光庁の「民泊制度運営システム」に登録し、必要書類をオンラインで提出します。届出に必要な書類には、住宅の図面や設備の配置図、管理体制の内容説明書などが含まれます。
自治体によっては、保健所への衛生管理に関する届出や、消防署への防火対象物使用開始届も求められます。特に、住居専用地域での営業には、地域の条例による制限がある場合があるため、事前に確認が必要です。また、宿泊者名簿の作成や、標識の掲示なども法令で義務付けられています。
消防設備の設置
消防法に基づき、民泊施設には適切な消防設備を設置することが義務付けられています。具体的には、各居室への住宅用火災警報器の設置が必須となります。さらに、延床面積や収容人数に応じて、消火器や誘導灯、避難経路図の設置も必要となる場合があります。
消防設備の設置後は、定期的な点検と維持管理が求められます。特に、火災警報器の電池交換や、消火器の使用期限管理など、安全性を確保するための継続的な取り組みが重要です。なお、消防設備の種類や設置基準は地域によって異なるため、所轄の消防署に確認することをお勧めします。
保険の加入
民泊事業者には、適切な保険への加入が強く推奨されます。特に、賠償責任保険は、宿泊者の事故や建物の損壊など、予期せぬトラブルに備えるために必要不可欠です。一般的な保険の補償内容には、施設賠償責任保険、個人賠償責任保険、施設内動産保険などが含まれます。
保険料は年間数万円程度からとなりますが、補償内容や補償限度額によって大きく異なります。また、火災保険や地震保険など、建物に関する保険についても、民泊利用を前提とした契約内容の見直しが必要となる場合があります。賃貸物件の場合は、大家さんとの協議の上で、適切な保険プランを選択することが重要です。
必要な設備
民泊施設には、宿泊者の快適性と安全性を確保するための基本的な設備が必要です。寝具やタオル類などの備品に加え、エアコンや給湯設備、調理設備なども整備する必要があります。また、玄関や各居室へのスマートロックの設置は、セキュリティ面で重要な設備となります。
Wi-Fi環境の整備や、多言語対応の案内表示の設置も、現代の民泊には欠かせない要素です。さらに、非常時の対応マニュアルや、緊急連絡先の掲示など、安全管理に関する設備も必要となります。これらの設備投資には50万円から100万円程度の費用が見込まれますが、物件の規模や提供するサービスの内容によって変動します。
民泊運営に適した賃貸物件の特徴とは?

民泊事業の成功には、適切な物件選びが重要な鍵を握ります。収益性の高い民泊運営を実現するためには、立地条件や建物の特性など、様々な要素を総合的に検討する必要があります。
物件選びのミスは、事業の収益性に大きく影響するため、以下のポイントを参考に慎重な判断が求められます。
観光地や駅周辺の好立地物件
観光地や駅周辺の物件は、宿泊需要が安定的に見込める立地となります。特に、主要駅から徒歩10分以内の物件は、観光客の利便性が高く、高稼働率を期待できます。また、空港や新幹線駅へのアクセスが良好な立地は、ビジネス利用も見込めるため、年間を通じた安定した集客が可能です。
観光スポットが徒歩圏内にある物件は、宿泊者の滞在満足度を高めることができます。さらに、飲食店や商業施設が充実している地域は、宿泊者の利便性が高く、口コミ評価にもプラスの影響を与えます。立地選びでは、周辺施設の充実度や、深夜のアクセス手段なども重要な判断材料となります。
競合の少ない穴場エリア
人気エリアには既に多くの宿泊施設が存在するため、新規参入のハードルが高くなります。一方で、観光地や繁華街の近郊など、競合の少ない穴場エリアでは、独自のポジションを確立しやすい環境があります。特に、新しい観光スポットの開発が予定されている地域や、再開発が進む地域は、将来的な需要増加が期待できます。
穴場エリアでの展開には、周辺の開発計画や地域の将来性を見極める目が必要です。また、地域特有のイベントや季節需要なども考慮に入れ、年間を通じた稼働率の確保を検討する必要があります。地域の特性を活かした独自のサービス展開により、競争優位性を確保することが可能です。
収益性の高い間取りと広さ
民泊の収益性を左右する重要な要素として、物件の間取りと広さがあります。一般的に、1Kや1LDKなどのコンパクトな間取りは、清掃や管理が効率的で、投資効率が高くなります。また、2LDK以上の物件は、ファミリー層や長期滞在者向けに高単価での提供が可能です。
収益性の高い物件の特徴として、以下の要素が重要となります。まず、居室とバス・トイレが独立している物件は、宿泊者のプライバシーが確保しやすく、高評価につながります。また、収納スペースが充実している物件は、清掃用具や予備の備品の保管に便利です。さらに、バルコニーや専用庭がある物件は、差別化要素として活用できます。
物件選びでは、家賃に対する収益性を重視する必要があります。一般的な目安として、想定される月間収入が家賃の2倍以上確保できる物件が望ましいとされています。また、建物の築年数や設備の状態も、運営コストに影響を与える重要な要素となります。
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民泊可能な賃貸物件はどうやって探す?

民泊可能な賃貸物件を見つけることは、事業成功の第一歩となります。しかし、一般的な賃貸物件の中から民泊利用可能な物件を探し出すのは容易ではありません。
効率的な物件探しを実現するためには、以下のような専門的なアプローチが有効です。
民泊物件紹介会社を使用する
民泊専門の物件紹介会社は、すでに大家さんの承諾を得ている物件や、民泊利用を前提とした物件を多数取り扱っています。これらの会社を利用することで、物件探しの時間を大幅に短縮することができます。専門会社の担当者は民泊運営のノウハウも豊富なため、初期費用の試算や収益シミュレーションなど、具体的なアドバイスを得ることも可能です。
また、民泊物件紹介会社は、法規制や必要な手続きについても精通しているため、開業までの道筋を明確にすることができます。特に、自治体ごとの規制や地域特有の課題など、細かな情報まで把握していることが大きな利点となります。ただし、紹介手数料が発生する場合があるため、事前に費用の確認が必要です。
不動産会社と交渉する
一般の不動産会社でも、民泊利用可能な物件を見つけることは可能です。ただし、民泊に対する理解度は会社によって大きく異なるため、以下のような段階的なアプローチが効果的です。まず、複数の不動産会社に民泊利用を前提とした物件探しを依頼し、対応に積極的な会社を見極めることが重要です。
不動産会社との相談では、具体的な事業計画や運営方針を示すことで、物件探しの効率を高めることができます。特に、管理体制や収益計画、トラブル対応の方針など、大家さんの不安を解消できる材料を準備することが重要です。また、物件探しと並行して、契約条件や原状回復の範囲など、具体的な交渉を進めることで、スムーズな契約締結が可能となります。
物件オーナーへ提案する
すでに気に入った賃貸物件がある場合は、大家さんに直接民泊利用を提案するアプローチも考えられます。この場合、以下のような具体的な提案内容を準備することが重要です。まず、民泊事業の具体的な運営計画や、想定される収益モデルを明確に示すことで、大家さんの理解を得やすくなります。
また、建物の価値向上につながる設備投資の提案や、長期契約による安定的な賃料収入の確保など、大家さんにとってのメリットを具体的に示すことが効果的です。特に、防音対策や防犯設備の強化など、建物の資産価値を高める提案は、交渉を有利に進める材料となります。
さらに、近隣住民とのトラブル防止策や、緊急時の対応体制など、大家さんの不安要素に対する具体的な解決策を示すことも重要です。提案時には、実績のある運営会社との連携や、充実した保険の活用など、リスク管理の観点からも信頼性を示すことができます。
まとめ
賃貸物件での民泊運営は、適切な準備と戦略があれば十分に実現可能な事業です。成功の鍵は、法的要件の遵守はもちろん、立地条件や物件特性を見極めた物件選びにあります。また、大家さんとの良好な関係構築や、リスク管理の徹底も重要なポイントとなります。
民泊事業は決して簡単ではありませんが、本記事で解説した内容を参考に、一つ一つ丁寧に準備を進めることで、安定した運営を実現することができます。市場調査や事業計画の策定など、しっかりとした準備期間を設けることをお勧めします。