「民泊事業を始めたいけれど、許可申請の方法がわからない」「法的な規制や必要な手続きが複雑で困っている」という声をよく耳にします。実際、民泊の許可申請には様々な種類があり、それぞれに異なる要件や制限が設けられています。
この記事では、民泊事業を始めるために必要な申請の種類や手続き、設備要件、必要書類など、実務経験に基づいた具体的な情報を詳しく解説します。
これから民泊事業の開始を検討されている方は、ぜひ参考にしてください。
民泊の許可申請の種類とは?

住宅を活用した宿泊サービスを始めるにあたり、営業形態に応じて3つの法制度から適切な許可申請を選択する必要があります。施設の立地条件や営業計画によって申請方法が異なるため、各制度の特徴と要件を正しく理解することが重要です。
旅館業法の簡易宿所申請
旅館業法に基づく簡易宿所営業の許可申請は、最も歴史のある民泊の営業形態です。保健所への申請を行い、33平方メートル以上の客室面積や宿泊者の衛生確保のための設備基準を満たす必要があります。建築基準法における用途地域の制限も受けるため、住居専用地域での営業には制限がかかります。
この申請方法の特徴として、年間の営業日数に制限がないことが挙げられます。そのため、本格的な宿泊事業として収益を見込む事業者に適しています。また、施設の改装や設備投資が必要となる場合が多く、開業までの準備期間として2〜3か月程度を見込む必要があります。
宿泊料を受け取って人を宿泊させる場合、旅館業法の許可が必要となります。無許可での営業は旅館業法違反となり、懲役刑や罰金刑の対象となる可能性があります。
特区民泊の認定申請
国家戦略特別区域内での民泊営業を行う場合は、特区民泊の認定を受ける必要があります。自治体への申請となり、25平方メートル以上の居室面積基準や滞在日数6泊7日以上などの要件を満たす必要があります。
特区民泊は国際観光需要への対応を目的としているため、外国人観光客の受け入れに重点を置いた制度設計となっています。特区内の住居専用地域でも営業が可能という特徴があり、都市部での空き家活用に適しています。
申請には施設の図面や設備の配置図、周辺住民への説明会の実施記録なども必要です。認定までの期間は地域により異なりますが、概ね1〜2か月程度かかります。特区民泊は地域限定の制度のため、営業を予定している地域が対象区域に含まれているか確認が必要です。
民泊新法による届出の手続き
2018年6月に施行された住宅宿泊事業法(民泊新法)に基づく届出制度は、比較的新しい民泊の営業形態です。都道府県知事または政令市の長への届出が必要で、年間営業日数が180日以内という制限があります。住宅宿泊管理業者への委託や、宿泊者名簿の作成、近隣住民への説明などが義務付けられています。
この制度の特徴として、住居専用地域でも営業が可能であり、既存の建物をそのまま活用できることが挙げられます。ただし、マンション管理規約での民泊禁止や自治体の条例による制限には注意が必要です。
届出から営業開始までに必要な期間は通常2週間程度です。施設の構造設備基準は旅館業法と比べて緩和されていますが、宿泊者の安全確保のための措置や、騒音防止などの管理体制の整備が求められます。
申請方法の難易度の違い
各申請方法には、それぞれ難易度の違いがあります。旅館業法による簡易宿所申請は、設備基準や構造要件が最も厳格で、申請手続きも複雑です。建築確認申請が必要となる場合もあり、開業までの準備期間と費用が最も必要となります。
特区民泊の認定申請は、居室面積や滞在日数の制限がありますが、設備基準は簡易宿所より緩和されています。ただし、地域が限定されており、外国人観光客の受け入れを前提とした運営計画が求められます。
民泊新法による届出は、3つの方式の中で最も申請のハードルが低く設定されています。既存住宅の活用が可能で、設備投資も最小限に抑えることができます。ただし、年間営業日数の制限や管理業者への委託義務など、運営面での制約があります。
民泊の種類別の営業制限は?

民泊事業を運営する際、営業形態によって営業日数や宿泊日数に異なる制限が設けられています。これらの制限は法令で定められており、違反した場合には営業停止などの行政処分の対象となる可能性があります。
各制度における具体的な制限内容について説明します。
簡易宿所の営業制限
旅館業法に基づく簡易宿所営業には、年間の営業日数や宿泊日数の制限が設けられていません。営業者の判断で365日営業することが可能です。施設の改修工事や定期的な設備点検などの必要期間を除き、継続的な営業が認められています。
この制度では宿泊料金の設定も自由であり、繁忙期と閑散期で料金を変動させることも可能です。ただし、衛生管理や防火管理などの基準は継続的に遵守する必要があります。施設の定期的な清掃や消防設備の点検は必須となります。感染症対策として、施設の消毒や換気などの衛生管理も欠かせません。
特区民泊の営業制限
特区民泊における最低宿泊日数は、当初は6泊7日以上と定められていましたが、制度の改正により2泊3日以上に緩和されています。ただし、地域によって異なる制限が設けられている場合があるため、営業地域の自治体に確認が必要です。
年間の営業日数に上限はありませんが、施設の提供日と宿泊者の滞在期間を正確に記録する必要があります。外国人観光客の受け入れが前提となっているため、日本人観光客のみの受け入れは認められていません。施設の稼働率を上げるためには、海外からの観光客需要を的確に把握することが重要です。
民泊新法の営業制限
住宅宿泊事業法による民泊には、年間営業日数の上限が180日と定められています。この日数制限は、住宅としての性格を維持するために設けられた基準です。営業日数のカウント方法は、住宅に人を宿泊させた日を1日として計算します。
具体的には、チェックインした日からチェックアウトする日までの間の宿泊室の提供日数をカウントします。同じ日に複数の部屋を提供した場合でも、1日としてカウントされます。宿泊者がいない日は営業日数にカウントされません。
営業日数の管理は住宅宿泊事業者の責任であり、日数管理を適切に行うための台帳の作成と保管が義務付けられています。180日の上限を超えて営業した場合、罰則の対象となる可能性があります。また、自治体によっては条例で営業制限期間を定めている場合があり、学校周辺地域での平日営業禁止などの制限が設けられています。
民泊施設に必要な設備要件とは?

民泊施設の運営には、宿泊者の安全と快適性を確保するための適切な設備が必要不可欠です。法令で定められた設備基準を満たすことで、初めて適法な民泊営業が可能となります。
施設の規模や形態によって具体的な要件は異なりますが、基本的な設備基準について解説します。
必須の居住設備
民泊施設では、宿泊者が日常生活を送るために必要な基本設備の設置が求められます。台所設備には、調理器具や食器類の収納設備、流し台、冷蔵庫などの設置が必要です。浴室とトイレは独立して設置することが望ましく、給湯設備も必須となります。
居住設備の性能基準も重要な要素です。給湯設備は適切な温度管理が可能なものを選択する必要があります。また、キッチンには換気扇やコンロ台の設置が必要で、火災予防の観点から熱源の種類にも注意が必要です。浴室には脱衣所を設け、プライバシーの確保と衛生管理に配慮した構造とすることが求められます。
消防設備の設置基準
消防法に基づく設備の設置は、宿泊者の安全確保のために特に重要です。延べ床面積や収容人数に応じて、消火器、自動火災報知設備、誘導灯などの設置が必要となります。各居室には煙感知器の設置が義務付けられており、定期的な点検と維持管理も必要です。
避難経路の確保も重要な要件です。二方向避難の原則に基づき、複数の避難経路を確保することが求められます。階段や廊下の幅員は避難時の安全性を考慮して適切な寸法を確保する必要があります。非常口の表示や避難経路図の掲示も必須となり、宿泊者にもわかりやすい場所に設置することが重要です。
衛生管理の設備要件
宿泊施設として適切な衛生環境を維持するための設備も重要です。各居室には適切な換気設備を設置し、必要な換気量を確保する必要があります。清掃用具の保管場所や洗濯設備の設置も求められ、定期的な清掃と消毒が可能な構造とすることが必要です。
寝具類の衛生管理のために、適切な保管場所と洗濯設備の確保が必要です。また、施設内の清掃を効率的に行うための給水設備や排水設備も適切に配置する必要があります。感染症対策として、手洗い設備やアルコール消毒液の設置場所も考慮が必要です。
居室の広さ基準
居室の床面積基準は、営業形態によって異なります。旅館業法による簡易宿所の場合、客室の延べ床面積は33平方メートル以上が必要です。特区民泊では1居室あたり25平方メートル以上、民泊新法では宿泊者1人当たり3.3平方メートル以上の床面積が必要となります。
収容定員の算定にも注意が必要です。居室の床面積に応じて適切な定員を設定し、過密な利用を避ける必要があります。また、天井高さは2.1メートル以上を確保することが求められ、窓などの開口部も適切な面積を確保する必要があります。収納設備の設置スペースも考慮に入れ、宿泊者が快適に過ごせる空間を確保することが重要です。
民泊許可申請に必要な書類は?

民泊事業を始めるにあたり、適切な許可を得るためには各種申請書類の準備が必要です。申請書類は営業形態によって異なりますが、一般的な必要書類について詳しく説明します。
申請書
申請書は民泊許可申請の基本となる書類です。申請者の氏名、住所、営業所の名称、所在地などの基本情報を記入します。法人の場合は、法人の商号、代表者名、本店所在地などの記載も必要です。申請書の様式は自治体によって定められており、記載事項に漏れがないよう注意が必要です。
申請書には営業の種別や営業施設の構造設備の概要なども記載します。特に構造設備に関する記載は、現地調査の際の確認項目となるため、実態と相違がないよう正確な情報を記入する必要があります。また、申請者が法令に定める欠格事由に該当しないことを誓約する書面の添付も必要です。
図面・写真
施設の構造や設備を示す図面類は、申請において重要な書類です。必要な図面には、建物の配置図、各階の平面図、居室や設備の詳細図などが含まれます。配置図には敷地境界線、道路との位置関係、建物の配置などを明示する必要があります。
平面図には居室の面積、出入口、窓の位置、設備の配置などを正確に記載します。また、防火設備や避難経路の表示も必要です。図面は一定の縮尺で作成し、寸法や方位を明記する必要があります。施設の外観写真や内部の設備写真も添付が必要で、現況を正確に示す必要があります。
本人確認書類
申請者の身元確認のための書類も必要です。個人の場合は住民票の写しや運転免許証の写しなどが必要です。法人の場合は、登記事項証明書や代表者の本人確認書類が必要となります。住民票は申請日前3か月以内に発行されたものを提出する必要があり、マイナンバーの記載がないものを用意します。
また、申請者が欠格事由に該当しないことを証明する書類として、身分証明書や登記されていないことの証明書なども必要です。これらの書類は申請時の本人確認だけでなく、事業者としての適格性を判断する際の重要な資料となります。
建物関連の必要書類
施設として使用する建物に関する権利関係を証明する書類が必要です。建物の登記事項証明書や、賃貸物件の場合は賃貸借契約書の写しなどが該当します。建物を民泊施設として使用することについて、所有者の承諾を得ていることを示す書面も必要です。
また、建築基準法関連の書類として、検査済証や建築確認通知書の写しなども必要となる場合があります。用途地域の制限により建築物の用途変更が必要な場合は、用途変更の手続きに関する書類も必要です。これらの書類は建物の合法性と安全性を証明する重要な資料となります。
消防法令適合通知書
消防法令への適合を証明する書類は、宿泊者の安全確保の観点から特に重要です。消防署による検査を受け、消防法令適合通知書を取得する必要があります。この通知書の取得には、消防設備等の設置状況や避難経路の確保状況などの確認が必要です。
検査の際は、消火器や自動火災報知設備などの消防設備が適切に設置されているか、避難経路や避難器具が正しく配置されているかなどが確認されます。また、定期点検の実施計画や防火管理者の選任に関する書類なども必要となります。消防法令への適合は民泊営業の許可を得るための必須条件となっています。
詳しくはこちらから! 国土交通省→住宅宿泊事業者の届出に必要な情報、手続きについて
民泊許可申請の手続きの流れは?

民泊の許可申請は複数の段階を経て進められる重要な手続きです。申請から許可取得まで、漏れのない対応が必要となります。手続きの各段階で適切な準備と対応を行うことで、スムーズな事業開始が可能となります。
それでは、具体的な手続きの流れについて説明します。
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事前確認と相談
許可申請の手続きを始める前に、営業予定地の用途地域や建築規制の確認が必要です。まずは自治体の建築指導課で用途地域による制限を確認します。住居専用地域では、旅館業法による営業が制限される場合があります。建物の用途変更が必要な場合は、建築確認申請など追加の手続きが発生する可能性があります。
次に保健所への事前相談を行います。施設の構造設備や衛生管理の基準について具体的な指導を受けることができます。この段階で必要な改修工事の内容や、申請に必要な書類の詳細を確認することが重要です。消防署への事前相談も必要で、消防設備の設置基準や避難経路の確保について確認します。
必要書類の準備と提出
申請に必要な書類は多岐にわたるため、計画的な準備が重要です。まず、申請書類の様式を入手し、記載内容を確認します。建物の図面や写真は、現地の状況を正確に反映したものを用意する必要があります。本人確認書類や建物関連の書類は、発行に時間がかかる場合があるため、早めの準備が必要です。
書類の提出前には、記載内容や添付書類に不備がないか十分な確認が必要です。特に図面類は、設備の配置や寸法が実態と一致しているか入念にチェックします。提出時には受付窓口で書類の内容確認が行われ、不備があれば修正や追加書類の提出を求められます。
設備検査と審査
書類審査が終わると、施設の立入検査が実施されます。保健所の検査官が現地を訪問し、申請書類の内容と実際の設備状況を照合します。検査では、居室の広さ、換気設備、給排水設備などの確認が行われます。消防署による消防設備の検査も実施され、避難経路の確保状況なども確認されます。
検査で指摘事項があった場合は、改善工事や追加の設備設置が必要となります。改善後は再検査を受け、基準に適合していることを確認する必要があります。並行して、申請者の欠格事由の有無や、周辺環境への影響などについても審査が行われます。
許可取得後
許可が下りると、営業許可証が交付されます。この許可証は施設内の見やすい場所に掲示する必要があります。営業開始前に、消防計画の作成や防火管理者の選任など、必要な体制整備を行います。また、宿泊者名簿の準備や料金表の掲示なども必要です。
営業開始後は、定期的な消防設備点検や衛生管理の実施が必要です。また、変更届や更新手続きなど、継続的な法令遵守も重要です。地域住民との良好な関係を維持するため、騒音防止や廃棄物の適正処理にも注意を払う必要があります。許可取得は事業の出発点であり、その後も適切な施設運営を継続することが求められます。
民泊許可申請の審査期間は?

民泊事業を始めるにあたり、申請から許可取得までの期間を把握することは、事業計画を立てる上で重要な要素です。営業形態によって審査期間が大きく異なるため、適切な準備期間を確保する必要があります。
各制度における標準的な審査期間について詳しく説明します。
民泊新法に基づく届出
住宅宿泊事業法による届出制度は、3つの申請方式の中で最も審査期間が短くなっています。届出から営業開始までの期間は法令上で14日間と定められています。この期間中に都道府県知事または政令市の長が届出内容を確認し、法令に適合していない場合は是正指示を行います。
書類の不備がない場合、14日間の経過後に自動的に営業を開始することができます。ただし、実務上は事前相談から届出までの準備期間として1か月程度を見込む必要があります。また、施設の改修工事が必要な場合は、工事期間も考慮に入れる必要があります。
提出書類に不備があった場合は、補正指示が行われ、修正した書類の再提出が必要となります。この場合、審査期間が延長される可能性があるため、書類作成時には慎重な確認が重要です。
旅館業法に基づく許可申請
旅館業法による簡易宿所の許可申請は、最も詳細な審査が行われる制度です。標準的な審査期間は2〜3か月程度ですが、施設の規模や立地条件によっては、さらに長期化する場合があります。申請から許可までの流れは以下のようになります。
事前相談から申請までの準備期間として1か月程度、書類審査に1か月程度、現地検査と改善期間に1か月程度が必要です。建築確認申請が必要な場合は、さらに2〜3か月の追加期間が発生します。消防法令適合通知の取得にも1か月程度かかるため、これらの手続きを並行して進める必要があります。
施設の改修工事が必要な場合は、工事期間も含めて計画を立てる必要があります。工事完了後の検査で指摘事項があった場合は、改善工事と再検査が必要となり、さらに期間が延長される可能性があります。
特区民泊に基づく認定申請
国家戦略特別区域における特区民泊の認定申請は、自治体によって審査期間が異なります。一般的には申請から認定まで1〜2か月程度かかりますが、地域の実情や申請内容によって変動する可能性があります。
特区民泊の特徴として、周辺住民への事前説明が義務付けられています。この説明会の実施と記録の作成に必要な期間も考慮する必要があります。また、外国人観光客の受け入れを前提とした施設整備や運営計画の審査も行われるため、これらの準備にも時間が必要です。
申請書類の作成から認定までの標準的なスケジュールは以下のとおりです。事前相談と住民説明に1か月程度、申請書類の作成に2週間程度、審査期間に1か月程度が必要です。施設の改修工事が必要な場合は、工事期間も含めて計画を立てる必要があります。また、地域によっては季節的な制限があり、申請時期によって審査期間が変動する場合もあります。
民泊許可申請で注意すべきポイントは?

民泊事業を適法に運営するためには、法令上の要件に加えて、地域特有の規制や周辺環境への配慮が必要不可欠です。
これらの要件を事前に確認し対応することで、円滑な事業開始が可能となります。
地域による規制の違い
各自治体では、独自の条例や規則によって民泊事業に関する規制を設けています。例えば、住居専用地域での営業制限や、学校周辺での営業禁止区域の設定などが該当します。これらの規制は地域によって大きく異なるため、事前の確認が重要です。
特に都市部では、住宅街の静穏な環境を守るため、休日のみの営業制限や深夜の騒音規制が設けられています。また、観光地では、観光客の集中による生活環境への影響を考慮して、エリアごとに民泊施設の総数を制限している地域もあります。
さらに、ごみ収集に関する規制も重要です。一般住宅とは異なる収集ルールが適用される地域や、事業系ごみとしての処理が必要な地域もあります。これらの地域特有の規制に違反した場合、行政指導の対象となる可能性があるため、慎重な確認が必要です。
マンション管理規約の確認
分譲マンションで民泊事業を行う場合、管理規約による制限が重要な確認事項となります。多くのマンションでは、管理規約で民泊営業を明確に禁止しているケースや、管理組合の承認を必要とするケースがあります。規約の確認を怠ると、後になって事業継続が困難となる可能性があります。
管理規約の確認では、専有部分の用途制限や、共用部分の使用制限などにも注意が必要です。エレベーターや廊下などの共用部分の使用について、宿泊者の出入りに関する制限が設けられている場合もあります。また、防犯カメラの設置や、宿泊者の身分確認方法についても、管理組合との協議が必要となる場合があります。
管理組合の承認を得る際は、具体的な運営計画や安全対策を示す必要があります。特に、緊急時の連絡体制や、騒音・ごみ問題への対応方針などについて、明確な説明が求められます。承認までに時間を要する場合もあるため、余裕を持った準備が重要です。
近隣住民への配慮事項
民泊施設の運営には、近隣住民との良好な関係構築が不可欠です。多くの自治体では、営業開始前の近隣住民への説明が義務付けられています。説明会では、営業計画の概要や、騒音・ごみ対策、緊急時の対応方法などについて、具体的な説明が必要です。
近隣住民への説明では、特に以下の点について丁寧な説明が求められます。まず、宿泊者の出入り時間帯や想定される人数について明確にします。また、騒音防止策として、施設内での注意事項の掲示や、深夜の制限事項などを説明します。ごみ処理については、分別方法や収集日時の徹底方法について具体的に示す必要があります。
さらに、緊急時の対応として、24時間対応可能な連絡先の設置や、管理者の迅速な現場対応体制についても説明が必要です。これらの説明内容は記録として残し、必要に応じて住民との協定書を作成することも検討します。近隣とのトラブルを未然に防ぐため、定期的なコミュニケーションの機会を設けることも重要です。
民泊の管理体制はどうする?

民泊施設の適切な管理運営は、宿泊者の満足度向上と地域との良好な関係維持に直結する重要な要素です。施設管理には専門的な知識と24時間体制での対応が必要となるため、多くの事業者が管理業者への委託を選択しています。
管理業者への委託
民泊施設の管理業務を外部委託する場合、登録を受けた住宅宿泊管理業者を選定する必要があります。管理業者の選定は事業の成否を左右する重要な判断となるため、以下の観点から慎重に検討することが重要です。
まず、管理業者の実績と対応体制を確認します。管理実績のある施設数や、トラブル対応の事例などから、業務遂行能力を判断します。特に、緊急時の対応体制や、多言語対応の可能性は重要な確認ポイントとなります。管理業者には24時間365日の連絡体制が求められるため、夜間や休日の対応状況も詳しく確認する必要があります。
管理業務の範囲と料金体系も重要な確認事項です。一般的な管理業務には、予約管理、チェックイン対応、清掃管理、設備メンテナンス、苦情対応などが含まれます。これらの業務範囲と料金内訳を明確にし、追加料金が発生する条件なども事前に確認しておく必要があります。料金体系は売上連動型や固定費型など様々な方式があり、事業計画に適した方式を選択することが重要です。
管理業者との契約に際しては、責任範囲の明確化が必要です。特に、設備の故障や事故発生時の対応責任、費用負担の範囲などについて、具体的な取り決めが重要です。また、契約期間や解約条件についても、明確な合意が必要です。管理状況の報告体制や、定期的な打ち合わせの機会についても、契約時に確認しておくことが望ましいです。
安全管理と緊急対応も重要な確認項目です。管理業者には、火災や事故などの緊急時に適切な初動対応ができる体制が求められます。また、地震や台風などの自然災害時の対応マニュアルの整備状況も確認が必要です。宿泊者の安全確保と、近隣住民への配慮を両立できる管理体制を構築することが重要です。
さらに、管理業者のコンプライアンス体制も重要な選定基準となります。個人情報保護の取り組みや、反社会的勢力との関係排除など、法令遵守の姿勢を確認する必要があります。また、従業員教育の実施状況や、マニュアルの整備状況なども、サービス品質を判断する重要な要素となります。
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まとめ
民泊事業の許可申請には、旅館業法による簡易宿所、特区民泊、民泊新法という3つの方式があり、それぞれの特徴と要件を理解することが重要です。申請にあたっては、営業形態に応じた設備基準や書類の準備、地域固有の規制への対応、近隣住民への配慮など、多岐にわたる準備が必要です。
また、施設の管理運営には専門的な知識と24時間体制での対応が求められるため、登録を受けた管理業者への委託も検討すべき選択肢となります。適切な準備と手続きを行うことで、円滑な事業開始と継続的な運営が可能となります。民泊事業の成功には、法令遵守はもちろんのこと、地域との良好な関係構築も欠かせません。
これらの要件を満たしながら、宿泊者に快適な滞在環境を提供することが、持続可能な民泊事業の実現につながります。