民泊事業の収益性に不安を感じていませんか。2018年の民泊新法施行以降、運営コストの上昇や競争激化により、以前のような利益を上げることが難しくなっています。しかし、適切な運営戦略と効率化により、民泊事業で収益を上げることは現在も十分可能です。

この記事では、民泊事業の現状と課題、そして収益改善のための具体的な方法について、解説します。ぜひ最後までご覧ください。
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民泊は本当に儲からないのか?

民泊事業の収益性は、法規制の強化や競合の増加により変化してきました。民泊で利益を上げるためには、適切な戦略と運営ノウハウが必要不可欠となります。以下で、民泊の収益性と現状について詳しく解説します。

結論:儲かるが、以前より稼ぎにくくなっている

民泊は確かに利益を生み出すことができますが、2018年の住宅宿泊事業法(民泊新法)施行以降、収益構造は大きく変化しました。管理や清掃などの運営コストが利益を圧迫する要因となり、人件費や光熱費の上昇により収益性は低下傾向にあります。

特に、物件の立地条件や運営方法によって収益には大きな差が生まれます。例えば、都心部の物件では一泊2万円以上の宿泊料金設定も可能ですが、郊外では5000円程度に設定せざるを得ない場合もあり、その差は歴然です。

実際の収支を見ると、都心の物件で月間稼働率70%を達成した場合、月額収入は40万円程度となります。ここから清掃費用15万円、管理費用10万円、光熱費3万円などの経費を差し引くと、純利益は月額12万円程度となる計算です。立地や運営方法次第では、これ以上の収益を上げることも十分可能となります。

なぜ民泊は思うように稼げないのか?

なぜ

民泊事業の収益性を左右する要因は複数存在します。収益を圧迫する具体的な課題を理解することで、対策を立てることが可能です。ここからは、民泊事業者が直面する主な収益悪化の要因について説明します。

高額な初期投資と運営費用が必要

物件取得や内装工事などの初期投資には平均して1000万円以上の資金が必要です。家具や家電の購入費用だけでも100万円程度かかり、さらに住宅宿泊事業者登録などの行政手続きにも費用が発生します。

運営費用には、毎月の固定費として物件の家賃や管理費、インターネット回線使用料、損害保険料などが含まれます。これらの経費は月額20万円程度にのぼり、収入が少ない月でも確実に支払う必要があります。

運営代行会社への依存しているため

24時間対応のチェックインや急なトラブル対応を個人で行うことは困難なため、多くの民泊オーナーは運営代行会社に業務を委託します。代行会社への手数料は売上の30%から50%程度を占め、収益を大きく圧迫する要因となります。

特に、清掃やリネン交換などの基本的なサービスに加え、緊急時の対応や予約管理まで委託する場合、手数料率は更に上昇する傾向にあります。

また、Airbnbを使用した集客の場合も15%が手数料がかかるため依存するリスクがあります。

競合との差別化不足

民泊物件の供給過多により、宿泊料金の値下げ競争が激化しています。一般的なマンションの一室では特徴を出しにくく、周辺の類似物件と料金以外の差別化が難しい状況です。

引用:観光庁 住宅宿泊事業法に基づく届出及び登録の状況(令和6年11月18日時点)

観光庁によると令和6年11月18日時点における住宅宿泊事業の届出住宅数は、前々月より1163件増加しています。また事業廃止件数も増加しており、厳しい競争環境であるということがわかります。

季節変動による収益の不安定さ

観光シーズンやイベント開催時期には高い稼働率を確保できますが、オフシーズンは極端に予約が減少します。特に、地方都市では季節による需要の変動が大きく、年間を通じた安定的な収益確保が困難です。

冬季は光熱費が上昇する一方で、宿泊需要は減少するため、収支バランスが悪化する傾向にあります。

予想外の修繕・メンテナンス費用

頻繁な利用による家具や設備の劣化は想像以上に早く、定期的な修繕や取り替えが必要です。エアコンの故障や排水管のつまりなど、突発的な修理の発生も収益を圧迫する要因となります。

宿泊者による物件の破損や設備の不適切な使用により、予期せぬ修繕費用が発生するケースも少なくありません。修繕費用は年間で売上の15%程度を占めることもあり、事業計画時の想定を上回ることが多いのが現状です。

民泊で稼げるようにするためにはどうすればいい?

解決

収益性を高めるためには、戦略的なアプローチと効率的な運営体制の構築が必要です。運営方法を最適化し、付加価値を高めることで、競争力のある民泊事業を実現できます。

明確なターゲット設定と集客戦略を考える

ターゲット層を明確にすることで、効果的な集客と収益の向上が実現できます。例えば、インバウンド観光客向けの場合、多言語対応の案内やWi-Fi環境の充実化により、宿泊単価を通常の20%程度高く設定することが可能です。

集客においては、Airbnbだけでなく、複数の予約サイトへの掲載や自社サイトの開設により、予約経路を分散させることで安定した予約獲得につながります。

また、プロのカメラマンによる写真撮影は、予約率を平均30%向上させる効果があります。

コスト削減のために運営を効率化させる

スマートロックやAIを活用したチェックインシステムの導入により、人件費を大幅に削減できます。実際に、自動チェックインシステムの導入により、運営コストを月額5万円程度削減した事例もあります。

清掃業務においては、複数の物件をまとめて委託することで、1室あたりの清掃費用を2割程度削減することが可能です。

また、アメニティの仕入れを一括化することで、コストを3割程度抑えることができます。

独自の付加価値サービスの提供する

地域特性を活かしたサービスの提供により、競合との差別化が可能です。地元の飲食店と提携した食事券の提供や、観光案内所としての機能を持たせることで、宿泊単価を上げることができます。

施設面では、デザイン性の高い内装や、ワーケーション向けの充実した作業環境の整備により、平均宿泊単価を5000円程度上げることが可能です。

また、長期滞在者向けに洗濯機や調理設備を完備することで、安定した収益確保につながります。

リピーター獲得のための施策を行う

宿泊者とのコミュニケーションを充実させ、高評価を獲得することで、リピーター化を促進できます。具体的には、到着時の丁寧な説明や、滞在中のこまめな情報提供により、顧客満足度を高めることができます。

リピーター向けの特別割引や、季節に応じた特典の提供により、再訪率を高めることが可能です。実際に、リピーター施策の導入により、年間の予約数が25%増加した事例もあります。

また、口コミ投稿を促進することで、新規顧客の獲得にもつながります。

それでも稼げない場合はどうすればいい?

最終手段

民泊事業の収益改善が困難な場合、早期の判断と対応が重要です。事業継続によるさらなる損失を防ぐため、状況に応じて適切な出口戦略を選択する必要があります。

民泊物件を売却する

売却を検討する基準として、6ヶ月連続で赤字が続く場合や、稼働率が30%を下回る状態が続く場合が目安となります。

物件売却時には内装や設備の状態が売却価格に影響します。民泊用に改装した設備は必ずしも売却価格に反映されないため、標準的な住居仕様に戻すことで、より幅広い購入者層にアプローチできます。

特に、築年数が浅く、交通アクセスの良い物件は、売却時の価格下落を最小限に抑えることが可能です。
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賃貸物件への転換する

立地条件が良好で物件の状態が維持されている場合、賃貸物件への転換は有効な選択肢となります。賃貸転換により、毎月の安定した家賃収入が見込め、運営コストも大幅に削減できます。

賃貸物件への転換時には、民泊で使用していた家具や家電の売却により、転換時の初期費用を回収できる場合もあります。また、民泊向けに整備した充実した設備は、賃貸物件としての競争力向上につながります。

実際に、高級マンションの場合、民泊から賃貸への転換後、近隣相場より25%程度高い賃料設定が可能となった事例もあります。

まとめ

民泊事業は決して儲からない事業ではありませんが、収益を上げるためには戦略的なアプローチが必要です。高額な運営コストや競合との差別化不足などの課題に直面していますが、ターゲットの明確化や運営の効率化、独自の付加価値サービスの提供により、収益性を改善することができます。

また、事業継続が難しい場合は、賃貸物件への転換や売却など、適切な判断を行うことで損失を最小限に抑えることが可能です。成功のカギは、市場環境の変化に応じて柔軟に戦略を見直し、継続的な改善を図ることにあります。