空き部屋や空き家を活用した民泊経営に興味はあるものの、必要な資格や要件について不安を感じている方は少なくありません。実は、民泊新法の施行により、民泊経営の参入障壁は大きく下がりました。
この記事では、民泊経営に必要な資格要件から、経営に役立つ資格、運営代行の活用方法まで詳しく解説します。
民泊経営に資格は必要なの?

民泊経営を始めるにあたり、資格の有無は多くの方が気にする点です。住宅宿泊事業法(民泊新法)の施行により、民泊経営の参入ハードルは大きく下がりました。
基本的な要件を満たせば、特別な資格がなくても民泊経営を始めることができます。
民泊経営は基本的に無資格でOK
住宅宿泊事業法に基づく民泊経営では、事業者に資格保有を求める規定はありません。必要なのは都道府県知事への届出制度に基づく登録です。この届出には、物件の図面や設備の状況、非常時の安全対策などの提出が求められます。
届出の際には、消防法や建築基準法などの関連法規に適合していることを証明する書類も必要となります。ただし、これらは資格ではなく、物件自体が満たすべき基準となります。
住宅宿泊事業者として登録するためには、暴力団員でないことや破産手続き中でないことなど、欠格事由に該当しないことが条件となります。また、年間の営業日数は180日以内という制限があり、宿泊者名簿の作成や衛生管理などの運営基準も遵守する必要があります。
適切な管理体制を整備できない場合は、住宅宿泊管理業者への委託が必要となりますが、これも事業者本人の資格要件ではありません。管理業者への委託により、清掃やメンテナンス、緊急時対応などを専門家に任せることができます。
民泊運営に資格が必要な3つのケースとは?

民泊経営の形態によっては、特定の資格や要件が必要となるケースがあります。事業規模や運営方法に応じて、求められる資格要件は大きく異なります。
それでは、資格が必要となる具体的なケースについて確認していきましょう。
住宅宿泊管理業者になる場合
住宅宿泊管理業者として登録するには、国土交通省令で定める資格要件を満たす必要があります。具体的には、宅地建物取引士や管理業務主任者などの資格保有者を専任の管理者として置くことが求められます。
さらに、管理業務に関する2年以上の実務経験も必要となります。この実務経験には、賃貸住宅やマンションの管理業務、ホテルや旅館での実務経験なども含まれます。
国土交通省への登録申請時には、財産的基礎や組織体制などの審査も行われ、これらの要件を満たさない場合は登録が認められません。
簡易宿所を自己管理する際
旅館業法に基づく簡易宿所として運営する場合、管理者には旅館・ホテル営業等の実務経験が必要となります。具体的には、フロント業務や接客、衛生管理などの実務経験が6か月以上求められます。
建築基準法上の用途変更が必要となるため、防火・避難設備の設置や耐火構造への改修など、厳格な基準を満たす必要があります。また、保健所による立入検査も実施され、衛生管理や設備基準の遵守状況が確認されます。
管理業務を自社で行う場合
自社で管理業務を行う場合、実務責任者には一定の資格や経験が必要となります。具体的には、不動産関連の資格保有者や宿泊施設での実務経験者を配置することが求められます。
管理体制の整備には、清掃やメンテナンス、緊急時対応などの実務マニュアルの作成も必要です。また、従業員教育や研修体制の構築など、継続的な品質管理の仕組みも求められます。
実務上は、消防法や建築基準法、衛生管理など、複数の法規制への対応が必要となるため、これらの知識を持つ有資格者の配置が推奨されます。
もし資格を持つならどんな免許が役立つの?

民泊経営をより効率的に運営するために、各種資格の取得は大きなメリットとなります。運営の品質向上や収益性の向上に直結する資格について、それぞれの特徴と活用方法を確認していきましょう。
宅建士資格
宅建士資格は、物件選定から契約手続きまで、民泊経営の基盤となる不動産実務に関する知識を網羅しています。賃貸借契約や重要事項説明などの法的手続きを自ら行えるため、仲介手数料の削減にもつながります。
物件調査では、立地条件や近隣環境の評価、収益性の分析など、専門的な視点からの判断が可能となります。また、区分所有建物における管理規約の確認や、地域の条例による規制の把握など、リスク管理にも役立ちます。
管理業務主任者資格
管理業務主任者は、建物の維持管理から入居者対応まで、施設運営に関する総合的なスキルを持ちます。設備の保守点検計画の立案や、修繕工事の発注・監理など、施設の長期的な維持管理に必要な知識を備えています。
日常的な清掃管理や設備点検の基準作成、従業員教育のマニュアル化など、運営品質の標準化にも活用できます。また、クレーム対応や緊急時の対策など、トラブル発生時の適切な判断にも役立ちます。
民泊適正管理主任者
住宅宿泊事業法に特化した資格として、民泊運営の実務知識を体系的に学ぶことができます。外国人観光客への対応や衛生管理基準の遵守など、民泊特有の運営ノウハウを習得できます。
宿泊者名簿の作成・保管や、近隣住民とのコミュニケーション方法など、法令遵守と地域との共生に必要なスキルも身につきます。実務上の課題解決にも即座に活用できる知識が習得できます。
建築士資格
建築士は、物件の改装工事や設備設計において専門的な判断が可能となります。消防法や建築基準法に適合した改修計画の立案や、コスト管理を含めた工事監理など、ハード面での品質確保に貢献します。
特に、用途変更に伴う法的要件の確認や、バリアフリー対応などの設備改修において、実践的な知識が活用できます。また、省エネ設備の導入など、運営コストの削減にも専門的な視点からアプローチできます。
賃貸不動産経営管理士
収益不動産の運営管理に特化した資格として、経営戦略の立案から収支管理まで、事業運営に必要な知識を体系的に学べます。市場分析や価格設定、収益予測など、経営判断に必要なスキルを習得できます。
長期的な資産価値の維持向上策や、税務・会計面での最適化など、経営者として必要な判断力も養えます。また、金融機関との折衝や事業計画の策定など、資金調達面でも専門知識が活用できます。
資格がなくても民泊運営代行を頼むのも手

民泊経営の実務面での負担を軽減する方法として、運営代行サービスの活用が注目されています。専門スタッフによる24時間対応や多言語での接客、清掃やメンテナンスの一括管理など、運営の煩雑さから解放されるメリットがあります。
代行会社は豊富な運営ノウハウを持ち、収益最大化のための価格設定や予約管理も行うため、オーナーは投資に専念できる環境が整います。また、日々変化する法規制への対応や、地域とのコミュニケーションなども代行会社が担当するため、安定した運営体制を構築できます。
さらに、複数の物件を所有する場合でも、一元的な管理が可能となり、スケールメリットを活かした効率的な運営が実現できます。運営代行を活用することで、民泊経営における様々なリスクやトラブルを未然に防ぎ、安定した収益確保につなげることができます。
関連:【効率的に稼ぎたい方必見】民泊運営代行とは?メリット、デメリット、向いている人の違いなど解説!
まとめ
民泊経営は、基本的に特別な資格がなくても始められる事業です。ただし、運営形態によっては住宅宿泊管理業者の資格や実務経験が必要となるケースもあります。経営の品質向上を目指す場合は、宅建士や管理業務主任者などの資格取得が有効です。
また、運営の負担軽減には専門性の高い運営代行サービスの活用も選択肢の一つとなります。状況に応じて最適な運営方法を選択することで、安定した民泊経営を実現できます。